アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
第7章 愛の問題/ジャンside
 ため息などついている場合ではなかった。

 ただ、他にできることも何もない。

 今はシャンゼリゼ通りを見下ろすホテルの部屋から外に出ることもできないのだ。

 追いかけ回す記者たちを振り切ってこの部屋に入ってからは、ルームサービスで頼んだ昼食にも手をつける気にならなかった。

 しかし、思いもよらぬところから計画が崩れるとは……。

 融資の交渉を進めていた金融グループの裏に、追い出した旧役員連中が隠れていたなんて。

 危うく株式の過半数を抑えられるところだった。

 チェックメイトの寸前で踏みとどまれただけ、まだチャンスはある。

 早急に別の融資元を見つけないと破産だ。

 だが、そう簡単に一億ユーロもの資金を融通できる相手が現れるとも思えない。

 ユリ、どうしたらいい……。

 もう何度目のため息だ。

 窓ガラスに映る弱気な自分の影を振り払う。

 何を弱気になっている。

 おまえはジャン・カミーユ・ド・ラファイエット、名門ラファイエット家の主だろう。

 だが、だめだ。

 頭の中にはユリのことしか思い浮かばない。

 今朝は顔も見ずに出てきてしまった。

 昨夜、あんなことになってしまって、挽回する言葉が思い浮かばなかった。

 自分は経営者としても夫としても失格なのか。

 愛してるのに、何が足りないんだ。

 スマホが鳴る。

 ミレイユ?

「ちょっと、ジャン!」

「どうした?」

「ユリが空港に向かったって! アランから連絡が来たの」

 なんだって!

「空港!? どうして?」

「日本に帰るんだって」

 ――まさか……。

 出て行くとは言っていたが、帰国はまだ先のはずだ。

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