アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
さびしさを振り払うために私は思いきってスプーンを差し入れて、グリーンアスパラの池の真ん中に浮かぶハートをすくい上げた。
「甘い」
アスパラガスの味はもちろんだけど、採れたてのコーンのように甘みもある。
それは野菜から出る自然な甘みが凝縮されたものだった。
予想もしなかった味わいに、思わず率直な感想を言ってしまった。
「僕らの愛のこと?」
いえ、違いますけど。
思い切りツッコんでしまって恥ずかしい。
ちょっとむせってしまったけど、声に出さなかったからセーフ。
次の料理はロブスターのアメリケーヌソースがけ。
日本でもありそうだけど、でも、ちょっとお皿が華やかだ。
真ん中の料理を取り囲むように、お皿の縁に色とりどりのソースで模様が描かれている。
給仕の女性がフランス語で説明するのをジャンが訳してくれた。
「縁のソースを混ぜて食べると少しずつ違う味を楽しめるそうだよ」
味変というやつか。
スプーンですくって食べられるようにゆでたロブスターの身を一口サイズに切ってある。
まずはシンプルなアメリケーヌソースで一切れ味わう。
想像通りの濃厚な魚介の香り。
これはこれでもちろんおいしい。
次はスプーンに赤いソースをすくって一緒に味わってみる。
あ、辛みが加わった。
黄色いソースはナッツとゴマかな?
とてもクリーミーな香りだ。
緑のソースはバジルとセロリのパンチのある味わい。
白いソースはなんだろう?
メレンゲっぽいけど……、あ、甘い。
お菓子みたいに甘い。
でも、不思議。
ちゃんとした料理になってる。
続いて出された肉料理はローストビーフで、付け合わせは野菜のシチュー、それに薄く切ってカリッと焼いたバゲットが添えられていた。
柔らかなシチューとバゲットの食感の対比が心地よいリズムを奏でてシンプルな味わいのローストビーフを引き立てる。
こんなにおいしいフルコースを味わっているのに私の心の半分は冷えていく一方だった。
本気になってもいいの?
あなたにとっては遊びなの?
本当は信じたい。
疑いたくなんかない。
でも、知り合ったばかりで、どうしてそんなに確信が持てるの?
どうしてあなたは自信に満ちあふれているの?
どうして私だって分かるの?
ふと、ため息が漏れる。
「どうしたの? 口に合わなかった?」
「ううん。とてもおいしかった」
チーズが運ばれてくる間、私は気になったことをたずねてみた。
「いつもこういったお食事なんですか。レストランみたいで、ご自宅だということを忘れてしまいそうです」
すると、ジャンが朗らかに笑い始めた。
「だってレストランだからね」
えっ?
「このお城の半分はレストランとして営業しているんだよ。このテラスはプライベートの領域だけどね」
「だから、こんなにスタッフさんもいるんですね」
「そういうこと。これだけの施設を個人だけで維持したり、設備を無駄に遊ばせておくわけにはいかないよ。ふだんはいたって普通のものを食べてるよ。冷凍食品だって食べるし。最近はよくできてるからね」
「え、そうなんですか。毎日こんなお食事をしているのかと」
「今夜は特別な夜だから」と、片目を軽くつむる。
もう、またすぐそういう話に持っていこうとする。
「甘い」
アスパラガスの味はもちろんだけど、採れたてのコーンのように甘みもある。
それは野菜から出る自然な甘みが凝縮されたものだった。
予想もしなかった味わいに、思わず率直な感想を言ってしまった。
「僕らの愛のこと?」
いえ、違いますけど。
思い切りツッコんでしまって恥ずかしい。
ちょっとむせってしまったけど、声に出さなかったからセーフ。
次の料理はロブスターのアメリケーヌソースがけ。
日本でもありそうだけど、でも、ちょっとお皿が華やかだ。
真ん中の料理を取り囲むように、お皿の縁に色とりどりのソースで模様が描かれている。
給仕の女性がフランス語で説明するのをジャンが訳してくれた。
「縁のソースを混ぜて食べると少しずつ違う味を楽しめるそうだよ」
味変というやつか。
スプーンですくって食べられるようにゆでたロブスターの身を一口サイズに切ってある。
まずはシンプルなアメリケーヌソースで一切れ味わう。
想像通りの濃厚な魚介の香り。
これはこれでもちろんおいしい。
次はスプーンに赤いソースをすくって一緒に味わってみる。
あ、辛みが加わった。
黄色いソースはナッツとゴマかな?
とてもクリーミーな香りだ。
緑のソースはバジルとセロリのパンチのある味わい。
白いソースはなんだろう?
メレンゲっぽいけど……、あ、甘い。
お菓子みたいに甘い。
でも、不思議。
ちゃんとした料理になってる。
続いて出された肉料理はローストビーフで、付け合わせは野菜のシチュー、それに薄く切ってカリッと焼いたバゲットが添えられていた。
柔らかなシチューとバゲットの食感の対比が心地よいリズムを奏でてシンプルな味わいのローストビーフを引き立てる。
こんなにおいしいフルコースを味わっているのに私の心の半分は冷えていく一方だった。
本気になってもいいの?
あなたにとっては遊びなの?
本当は信じたい。
疑いたくなんかない。
でも、知り合ったばかりで、どうしてそんなに確信が持てるの?
どうしてあなたは自信に満ちあふれているの?
どうして私だって分かるの?
ふと、ため息が漏れる。
「どうしたの? 口に合わなかった?」
「ううん。とてもおいしかった」
チーズが運ばれてくる間、私は気になったことをたずねてみた。
「いつもこういったお食事なんですか。レストランみたいで、ご自宅だということを忘れてしまいそうです」
すると、ジャンが朗らかに笑い始めた。
「だってレストランだからね」
えっ?
「このお城の半分はレストランとして営業しているんだよ。このテラスはプライベートの領域だけどね」
「だから、こんなにスタッフさんもいるんですね」
「そういうこと。これだけの施設を個人だけで維持したり、設備を無駄に遊ばせておくわけにはいかないよ。ふだんはいたって普通のものを食べてるよ。冷凍食品だって食べるし。最近はよくできてるからね」
「え、そうなんですか。毎日こんなお食事をしているのかと」
「今夜は特別な夜だから」と、片目を軽くつむる。
もう、またすぐそういう話に持っていこうとする。