アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
◇
――ユリ……。
彼が私の涙に口づけている。
――ユリ……。
涙に溺れそうで息ができない。
私は魚のように口を開けて嗚咽の中で思いを打ち明けた。
「隠しててごめんなさい」
ジャンが優しく私の髪をかき撫でる。
「あやまらなくていいんだよ。あやまっちゃいけないよ。君は何も悪くないんだ、ユリ」
「だって……、だって……」
「泣かないでくれ、愛してるよ」
だけど涙は止まらない。
止められない。
「あなたに嫌われたくないのに。あなたのそばにいたいのに。ずっとそばにいたかったのに」
「嫌うはずがないだろ。僕は君を離さないよ。そばにいるよ。僕らが今こうしていることが答えのすべてだろ」
――本当に?
「君が勇気を出してくれたことを何よりも愛しく思うよ」
――いいの?
「だって、僕だからなんだろ。僕だから打ち明けてくれたんだろ。僕を選んでくれたんだろ」
――私でいいの?
「僕だけが君という宝を愛することができるんだろ」
――本当に、私でいいの?
「ユリ、僕は世界一幸運な冒険者だよ。君という宝を手に入れたんだからね」
彼が私を抱きしめ、素肌を密着させる。
「僕を見て。僕だけを見て」
私も答える。
「私を見て」
「見てるよ」
「私だけを見て」
「君しか見えないよ」
ブルーの瞳がありのままの私を愛でている。
「信じていいの?」
「言っただろ」と、彼が私をまっすぐに見つめていた。「僕らの永遠はもう始まっているんだよ」
――ジャン……。
「うれしい」
「僕もだよ」
「ありがとう」
彼は私の首筋に口づけると、少しずつゆっくりと舌先を這わせていった。
鎖骨をゆるやかに越えて丸い肩をたどり脇と腕の溝を軽くなぞると脇腹を一息に滑っていく。
思わず身をよじる私の反応を楽しみながら彼の舌と唇はフィギュアスケートのように臍から先へと流れていく。
自分でも気がつかないうちに私は声を漏らしていた。
彼にされるままにいつの間にか下も脱がされていた。
そして彼が繊細な場所に顔を埋める。
うそ、そんなところ。
うそでしょ。
ちょっ……と……いったい……な……にを……。
――だめ。
あらがおうとした私の脚を毒サソリのように抱え込み、むしろ容赦なく彼が攻め入ってくる。
一瞬で頭の中が真っ白になる。
ほんの一瞬が永遠のようで、その永遠が一度に襲いかかってきたようで、遙か遠いどこかへ意識が吹き飛ぶ。
思わず私は彼の頭を押さえつけていた。
『だめ』なんて叫んでおいて。
彼を求めてしまう。
恥ずかしいのに我慢できない。
今まで知らなかったことばかりで、私はただなすがままに彼を受け入れるしかなかった。