アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
 どれくらいの間そうされていたのか何も分からない。

 ――ユリ……。

 彼の息が耳をくすぐる。

 気がつくと彼はまた私にのしかかっていた。

 私の手には彼の栗色の髪の毛が握られていた。

 無我夢中で引き抜いてしまったらしい。

「ご、ごめんなさい。私……」

「平気だよ。それより、そんなに夢中だった?」

 恥ずかしさに返事なんかできない。

 私は手で顔を覆って恥じらいを見られないようにするのが精一杯だった。

「ユリ、愛してるよ」

 引き裂かれるような痛みと共に彼が私の中に入ってきた。

 でもそれはほんの一瞬だけのことだった。

 充分に解きほぐされた体が意思とは無関係に彼を奥へ奥へと招き入れる。

 汗ばんだ肌を密着させて彼の漏らす吐息が耳にかかる。

 彼のエンジンは回転を高めていき、むき出しの配管を思わせるほど贅肉をそぎ落とされた脇腹の筋、隆々とした肩や背中の筋肉、それらすべてが一体となって雄の本能をほとばしらせていた。

 その熱さに思わず私は彼の背中に爪を立ててしまった。

 焦りぎみだった彼が我に返ったのか、私の中で動きを止めた。

 息を整えながら私の前髪をそっと撫であげると、額に軽く口づける。

「最高の人生に必要なものが分かったよ」と、あらためて私の反応を確かめながら彼が再び動き出す。「君だよ、ユリ。もう、君のいない人生なんて考えられないよ」

 それは私も同じだった。

「離さないよ。ほんの一瞬でも。二人で永遠を作ろう」

 私の体も彼の動きにシンクロを始める。

 こんな自分を今まで知らなかった。

 ――わかる。

 私には分かる。

 この人に会うために今まで生きてきたの。

 これまでの年月は決して無駄じゃなかった。

 この瞬間を迎えるために必要だったの。

 私は彼の名を呼び、彼を求めていた。

 こんなにも感情があらわになったことはなかった。

 それどころか、自分にこんな感情があったことすら知らなかった。

 彼がうめく。

 崩れ落ちる彼を受け止めながら、私は生まれて初めて、これまで生きてきたことの喜びをかみしめていた。

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