アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
カフェオレを飲み終えたジャンが立ち上がる。
「食後の散歩はどうかな? 運河のまわりを歩くくらいなら鳥たちの邪魔にはならないだろ」
「今日は予定はないの? お仕事は?」
「さっきクロードに連絡を頼んだから、もう少ししたら市長が来ることになってる」
「じゃあ、お仕事しなくちゃ」
「仕事じゃないんだ。どちらにしろ市長が来るまでは暇だよ」
経営者って忙しいんじゃないの?
それなのにジャンはお構いなしにテラスから庭園へ下りていく。
靴を履き替えなくちゃなんて一瞬思ったけど、日本じゃないものね。
ずっと靴を履いてる生活だと、外も中も関係ないけど、やっぱり慣れないな。
「ほら、おいでよ」
「待って、今行く」
私もジャンを追いかけて運河のそばへ行ってみた。
さっきの白鳥は私たちが近づいても逃げるというわけでもなく、静かに向きを変えただけで同じ場所を漂っている。
頭をくっつけあって仲睦まじそう。
近くで見てもやっぱり運河の大きさに圧倒されてしまう。
かすんでしまうほど遙か先までまっすぐに伸びていて、その周囲を樹木が整然と並んで、空の青と若葉のコントラストが鮮やか。
波一つなくそれを映し出す水面は磨き上げられた鏡のよう。
「絵画みたいね」
「実際、ここの風景を描いた作品がルーブルにあるんだよ」
ジャンが白鳥を追い越して歩いていく。
「あんまり遠くまで行くと戻るのに時間がかかるんじゃないの?」
「もう少し行ったところに噴水があるんだ。そこまで行こう」
そう言って背中を向けたジャンの腕に駆け寄って私は腕を絡めた。
自分からそんなことをするようになるなんて、本当に昨日までは想像もしていなかった。
でも今はそうしていたいし、そうしていなくちゃいられない気分。
離れたくないし、離したくない。
「そうだ」
急にジャンが立ち止まった。
――何かあるの?
腕を絡めたまま向き合う。
私の顎を彼の親指が押し上げる。
「さっきクロードに邪魔されたままだったね」
彼の唇が私の口を塞ぐ。
青空の下でするキスも嫌いじゃない。
目を閉じているから空の青さは分からないけど。
「食後の散歩はどうかな? 運河のまわりを歩くくらいなら鳥たちの邪魔にはならないだろ」
「今日は予定はないの? お仕事は?」
「さっきクロードに連絡を頼んだから、もう少ししたら市長が来ることになってる」
「じゃあ、お仕事しなくちゃ」
「仕事じゃないんだ。どちらにしろ市長が来るまでは暇だよ」
経営者って忙しいんじゃないの?
それなのにジャンはお構いなしにテラスから庭園へ下りていく。
靴を履き替えなくちゃなんて一瞬思ったけど、日本じゃないものね。
ずっと靴を履いてる生活だと、外も中も関係ないけど、やっぱり慣れないな。
「ほら、おいでよ」
「待って、今行く」
私もジャンを追いかけて運河のそばへ行ってみた。
さっきの白鳥は私たちが近づいても逃げるというわけでもなく、静かに向きを変えただけで同じ場所を漂っている。
頭をくっつけあって仲睦まじそう。
近くで見てもやっぱり運河の大きさに圧倒されてしまう。
かすんでしまうほど遙か先までまっすぐに伸びていて、その周囲を樹木が整然と並んで、空の青と若葉のコントラストが鮮やか。
波一つなくそれを映し出す水面は磨き上げられた鏡のよう。
「絵画みたいね」
「実際、ここの風景を描いた作品がルーブルにあるんだよ」
ジャンが白鳥を追い越して歩いていく。
「あんまり遠くまで行くと戻るのに時間がかかるんじゃないの?」
「もう少し行ったところに噴水があるんだ。そこまで行こう」
そう言って背中を向けたジャンの腕に駆け寄って私は腕を絡めた。
自分からそんなことをするようになるなんて、本当に昨日までは想像もしていなかった。
でも今はそうしていたいし、そうしていなくちゃいられない気分。
離れたくないし、離したくない。
「そうだ」
急にジャンが立ち止まった。
――何かあるの?
腕を絡めたまま向き合う。
私の顎を彼の親指が押し上げる。
「さっきクロードに邪魔されたままだったね」
彼の唇が私の口を塞ぐ。
青空の下でするキスも嫌いじゃない。
目を閉じているから空の青さは分からないけど。