アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
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クロードさんはいつもと変わらない様子で淡々と車を運転して、私たちは城館へ帰ってきた。
車内で会話はなく、ジャンも私もいつの間にか眠ってしまっていた。
夕方になって少し雨が降ったので、夕飯は城館に付属したレストランでとることになった。
一般のお客さんに混じって昨日と同じようにフルコースをいただいた。
結構混んでいて、会話で盛り上がったり、時々笑いが起きたりするけど、決して場の雰囲気が壊れることもなく、お客さんたちはみんな和やかに食事を楽しんでいる。
「いいレストランね」
「だろ。ここは黒字なんだ」
夫が経営者の顔になる瞬間って、ちょっとキュンとくる。
今日は自分でチーズを選んでみた。
グリュイエールとミモレット、それとロックフォールにしてみた。
「ジャンはいつもチーズを食べるの?」
「いや、そうでもないよ。一人の時はワンプレートの食事で済ませることが多いからね。日本人が毎日納豆を食べてるわけじゃないのと同じだよ」
「ジャンは日本にいた頃に納豆は食べたことあるの?」
「あるよ。最初、京都に行ったときに納豆を食べたいと言って恥をかいたよ。東日本のものだとは知らなかったからね。『ガイジンサン』の洗礼を受けたってわけさ」
「臭いとか粘りとか大丈夫だった?」
「奇妙な食べ物だと聞いていたわりに全然悪くなかったよ。むしろ滞在中は結構食べてたね。安いし、おいしいし、栄養満点で卵かけご飯と納豆があれば何もいらないよ。箸の使い方に慣れるまでが大変だったけどね。納豆をのせたご飯をこぼさず箸で食べられるようになったときは人生で一番というくらいうれしかったよ」
やばい、私の方が食事のマナーが悪いかも。
「ああ、でも、ユリと出会ったときの方が一番うれしかったけどね」
なんのフォローよ。
「納豆と比べないでよ」
「僕にとって最高のごちそうは君だよ」
その言葉の通り、私はまた彼に食べられることになった。