アラサー地味子@シャトーホテル/フランスでワケアリ御曹司に見初められちゃいました
第6章 破局
タクシーで城館に帰ってきて、クロードさんからもらった黒いクレジットカードで支払う。
「メルシ・マダム・ラファイエット」
タクシーの運転手さんが手を振って去って行った。
なんで私の名前を知ってるのかと一瞬驚いたけど、カードの名義人だから当たり前だよね。
と、納得しかけて、ふとカードを見たら、もっとすごい事実に気がついた。
『ラファイエット・ホテルズ・アンド・リゾーツ』のカードだったのだ。
自前のクレジットカード・ブランドまであるなんて、どんだけ金持ちなのよ。
すごいところに嫁に来ちゃったな、私。
カードを持つ手が震えて落っことしそうになっちゃったし。
朝、出がけに言っていたとおりジャンは帰ってなかったから、夕食は一人でとることになった。
メイドさんがわざわざ私の寝室まで運んで下さった。
ホテルのルームサービスみたいだったけど、一人で食べるのはさびしい。
もともとお一人様だったくせに……。
でも、フランス料理のコースを一人って、もしこれがクリスマスとかだったら泣いちゃうでしょ。
ジャンが一人だと冷凍食品を食べてるっていうのも、かえって当然のような気がする。
そもそも城館に住むって、現実感がなさすぎる。
もしこんなところで納豆に味噌汁のご飯を食べたら、自分のしてることをテレビで見てるみたいな気がしちゃうんだろうな。
ヒレステーキも鱒のグリルもおいしいんだけど、食べてる実感がない。
そんなふうに感じるのがおかしいってことも分かる。
だって、自分はそもそもシャトーホテルのお客さんになるはずだったんだから。
多分、豪華な雰囲気に浸りきって、お姫様気分なんて浮かれていたはずだもの。
なのに、生活することになった途端に、違和感を感じてしまう。
まあそれは、日本の暮らしとかけ離れてるから仕方がないのかもしれないけど、これに慣れるのって、どれくらい時間がかかるんだろう。
そんなことを考えながら夫の帰りを待ちわびる妻の役を忠実に演じていたら、ジャンが帰ってきたのは日付が変わりそうな時間だった。
寝室のベッドの上で耳を澄ませていたから、車寄せに静かにロングベンツが到着したのは分かった。
ナイトガウンの上に薄い肩掛けを羽織って玄関ホールまで出迎えにいく。
「お帰りなさい」
階段の踊り場から声をかけたら驚いた表情で彼が私を見上げた。
「な、なんだ。ユリか」
急に心にさざ波が立ち始める。
なんだろう、この違和感。
ただの勘としか言いようがないのに、ものすごく確信的に心の中に沸き起こる不信感。
「メルシ・マダム・ラファイエット」
タクシーの運転手さんが手を振って去って行った。
なんで私の名前を知ってるのかと一瞬驚いたけど、カードの名義人だから当たり前だよね。
と、納得しかけて、ふとカードを見たら、もっとすごい事実に気がついた。
『ラファイエット・ホテルズ・アンド・リゾーツ』のカードだったのだ。
自前のクレジットカード・ブランドまであるなんて、どんだけ金持ちなのよ。
すごいところに嫁に来ちゃったな、私。
カードを持つ手が震えて落っことしそうになっちゃったし。
朝、出がけに言っていたとおりジャンは帰ってなかったから、夕食は一人でとることになった。
メイドさんがわざわざ私の寝室まで運んで下さった。
ホテルのルームサービスみたいだったけど、一人で食べるのはさびしい。
もともとお一人様だったくせに……。
でも、フランス料理のコースを一人って、もしこれがクリスマスとかだったら泣いちゃうでしょ。
ジャンが一人だと冷凍食品を食べてるっていうのも、かえって当然のような気がする。
そもそも城館に住むって、現実感がなさすぎる。
もしこんなところで納豆に味噌汁のご飯を食べたら、自分のしてることをテレビで見てるみたいな気がしちゃうんだろうな。
ヒレステーキも鱒のグリルもおいしいんだけど、食べてる実感がない。
そんなふうに感じるのがおかしいってことも分かる。
だって、自分はそもそもシャトーホテルのお客さんになるはずだったんだから。
多分、豪華な雰囲気に浸りきって、お姫様気分なんて浮かれていたはずだもの。
なのに、生活することになった途端に、違和感を感じてしまう。
まあそれは、日本の暮らしとかけ離れてるから仕方がないのかもしれないけど、これに慣れるのって、どれくらい時間がかかるんだろう。
そんなことを考えながら夫の帰りを待ちわびる妻の役を忠実に演じていたら、ジャンが帰ってきたのは日付が変わりそうな時間だった。
寝室のベッドの上で耳を澄ませていたから、車寄せに静かにロングベンツが到着したのは分かった。
ナイトガウンの上に薄い肩掛けを羽織って玄関ホールまで出迎えにいく。
「お帰りなさい」
階段の踊り場から声をかけたら驚いた表情で彼が私を見上げた。
「な、なんだ。ユリか」
急に心にさざ波が立ち始める。
なんだろう、この違和感。
ただの勘としか言いようがないのに、ものすごく確信的に心の中に沸き起こる不信感。