極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
プロローグ
厳しい寒さがなりをひそめ、ようやく春めいてきた三月中旬。東京都赤坂にある某シティホテルのロビーで妹尾繭は二度と顔を見たくないと思っていた男との再会を果たしていた。ホテル内のカフェで、アイスコーヒーをテイクアウトして帰ろうとしたところ、ばったり遭遇してしまったのだ。
「あ~、やっぱり。繭ちゃんだよね」
狡猾そうな目もヘラヘラと締まりのない口元も、当時からちっとも変っていない。湧きあがってくる嫌悪感を隠しきれず、繭は顔をしかめる。
(――よく私に話しかけようなんて思えるな)
大袈裟でもなんでもなく、繭の人生はこの男、加賀卓也に狂わされたのだ。だが、卓也は楽しいおもちゃを見つけた子どものように瞳を輝かせて繭を見た。
「がんばって手に入れた大手企業の内定を蹴って、派遣生活なんでしょ。こんな高級ホテルになんの用があったの?」
嘲笑交じりに彼は言う。相手をするだけ無駄だ、繭はそう思って口を引き結んだ。
「あ~、やっぱり。繭ちゃんだよね」
狡猾そうな目もヘラヘラと締まりのない口元も、当時からちっとも変っていない。湧きあがってくる嫌悪感を隠しきれず、繭は顔をしかめる。
(――よく私に話しかけようなんて思えるな)
大袈裟でもなんでもなく、繭の人生はこの男、加賀卓也に狂わされたのだ。だが、卓也は楽しいおもちゃを見つけた子どものように瞳を輝かせて繭を見た。
「がんばって手に入れた大手企業の内定を蹴って、派遣生活なんでしょ。こんな高級ホテルになんの用があったの?」
嘲笑交じりに彼は言う。相手をするだけ無駄だ、繭はそう思って口を引き結んだ。
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