極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 繭に甘える小さな男の子は、アルバムのなかの自分が抜け出てきたのかと疑うほどにうりふたつだった。今の樹は長身に筋肉質な身体つきで中性的な雰囲気はまったくないが、子どもの頃はこの子のようにとても華奢で、よく女の子と間違われた。
 おおいに困惑しながらも、樹はこのまま繭と別れてはいけないことだけは直感的に理解した。少しひねっただけの足を口実になんとか彼女を引き止める。

 自分にそっくりな子の正体を確かめたいという思いももちろんあるが、ただ純粋にやっと会えた繭との縁を今度こそ大切にしたい気持ちが強い。

 とはいえ、繭が樹の知らない男と幸せな結婚をし、樹にそっくりな子はその男との子どもであるならば、彼女につきまとうわけにはいけない。ハンドルを握りながら、樹は思い悩む。子どもは一歳を迎えたばかりだと繭は言った。よく聞く十月十日は実際の日数とは違うらしいが、それでもあの一夜の子としては計算がおかしいことになる。

(だが、赤の他人がこんなに似ることがあるのか?)

 繭に抱かれた子どもの顔を見ると、『自分の子どもなのでは?』という疑惑はますます深まる。
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