極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「きゃあ」

 自宅の前で車からおりるときに繭がバッグを落とした。その中身が思いがけず、樹に大きなヒントをくれる。保育園の連絡帳だ、開かれていたページには誕生日の記載がある。

【おたんじょうび 十二月九日】

 視界に飛び込んできたその情報に樹は目を瞬く。

(十二月生まれ? 今は六月だぞ。誕生日から半年も過ぎているのに一歳になったばかりと言うか?)

 冷静になって考えてみても、繭が嘘をついた理由はひとつしか思い当たらない。

(旬太が俺の子どもだから……それを隠すための嘘か)

 ミリガン&ジェイで繭の退職の経緯も調べた。彼女が退職の意思を伝えたのは樹の渡米からひと月半後。その少し前から体調が悪そうで仕事を休むことも増えていたそうだ。彼女と親しかったパラリーガルの美智子に樹は話を聞いた。

「げっそり痩せちゃって、思い悩んでる様子で……深刻な病気なんじゃないかって心配したんです。けど本人は実家の都合だって、それしか教えてくれなくて。退職後も何度かメールでやり取りしたんですけど、あまり深く聞いてほしくなさそうでした」

 体調不良も退職も、樹が彼女を妊娠させたことが原因。そう考えると、すべてが矛盾なくつながる気がした。

「そうか。ありがとう」
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