極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「慰めてくれるの? ありがと、メロ」

 動物や子どもは弱っている者を敏感に察するのだろうか。最近、旬太もやけに優しいのだ。道で拾った綺麗な石や葉っぱを毎日のように繭にプレゼントしてくれる。

(大好きな旬太とふたりの静かな暮らしに戻ろうか……)

 これ以上、樹と一緒に暮らすのはある意味でしんどいことだった。時間を重ねれば重ねるほど、どんどん樹を好きになる。彼を騙している罪悪感が膨れあがり、繭に重くのしかかる。

 川口はあれきり事務所にも自宅にも姿を見せていない。もう樹に護衛してもらう必要もないだろう。

「なにをそんなに悩んでるの?」

 菩薩のような笑みを浮かべて、慎太郎が繭を見る。繭は言葉を選びながら、慎太郎に助言を求めた。

「逃げたらダメだってわかってるのに、逃げたくなって……タロ先生ならこういうとき、どうやって勇気を出しますか?」

 慎太郎は繭の向かいの丸椅子に腰かけながら、ふっと笑んだ。

「僕なら、逃げちゃうかな!」
「え?」

 慎太郎はにこりとほほ笑み続ける。
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