極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 結果は同じという可能性もある。正直に打ち明けたら、樹に嫌われて彼は離れていくかもしれない。けれど、なにもせずに諦めるのと、当たって砕けろでぶつかった結果なら、きっと後者のほうが後悔は少ない。まっすぐに気持ちを伝えてくれた樹に、繭ができることは正直に、誠実になることだ。

「タロ先生、ありがとうございます!」

 繭は慎太郎に頭をさげる。

「あぁ。繭ちゃんらしい、いい顔になったね」

 その夜、繭は勇気を出して樹に声をかけた。風呂からあがったばかりの彼は白いブイネックのティーシャツ一枚というラフなスタイルで、ちらりとのぞく男らしい鎖骨に繭の心臓はどきりと跳ねる。

(このくつろいだ姿も、もう見おさめになるかも。しっかり脳裏に刻んでおこう)

「なんだよ、ジロジロ見て」

 たじろいでいる樹がかわいく、込みあげてくる思いで繭の胸はいっぱいになる。弁護士・高坂樹が決して見せることのない、素のままの彼が繭は大好きで、もっと、いつまでもそばで見ていたい。けれど、もう嘘をつき続けることはできない。

 繭は真剣な声で言う。

「樹くん。明日、少し時間をもらえませんか?」
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