極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 そう言うと、ふわりと包み込むように繭の身体を抱き締めた。その温かさに、繭はポロポロと大粒の涙をこぼした。

「そ、それは私の台詞です。樹くんが死んじゃったらどうしようって、怖くて……不安で……」

 それ以上は言葉が続かなかった。しゃくりあげるように泣く繭を樹は力強く抱きすくめる。規則的に響く彼の鼓動に、繭はやっと安心できた。

「よかった、樹くんが生きてて……」
「大丈夫。告白の返事をもらうまでは絶対に死なないから」

 大真面目にそう言った樹に、繭は困った顔で訴える。

「それだと、私が返事をしたら死んじゃうフラグみたい」

 そんなフラグを立ててしまったら、繭は永遠に樹に好きだと言えなくなってしまう。樹はいたずらな瞳で繭の顔をのぞき込む。

「それは繭の返事次第かな」

 極上に甘い彼の笑顔に背中を押されるように、繭はゆっくりと言葉を紡ぐ。さっきまでは恐怖でバクバクと鳴っていた心臓が、今度は別の理由でうるさく騒いでいる。

「好き。二年前はただの憧れだったかもしれないけど、今はちゃんと樹くんが好きです」

 焦らすような速度で、樹の顔が繭に近づく。鼻先は触れ合ったその瞬間、繭の背中に声がかかる。

「あの~、お気持ちはとってもわかるんですが……事情聴取をしなくてはいけなくてですね」
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