極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 若い警官の気まずそうな表情に、繭は真っ赤な顔でその身をすくめる。

 事情聴取は想像以上に時間がかかり、ふたりが自宅へ戻れたのは夜二十一時頃だった。

「旬太を実家に預けていたのは運がよかったな」

 ライトブルーのネクタイを緩めながら、樹は言った。

「ですね。旬太に怖い思いをさせなくて済んでよかった」

 そう返した繭の背中が温かいものに包まれる。樹が後ろから繭を抱き締めたのだ。彼は後悔をにじませた声で低くつぶやく。

「悪かった。俺がもう少し早く戻っていれば、繭を危険にさらすこともなかったのに」

 繭の鎖骨の辺りに回された樹の手の甲や前腕には、いくつかの生々しい切り傷ができている。繭はその傷口をそっと指先でなぞりながら、彼に答える。

「謝るのは私のほうです。関係ない樹くんをトラブルに巻き込んで、こんな怪我までさせてしまって」

 
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