極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 繭はきっぱりと首を振る。

「シングルマザーになったのは私が自分で決めたことです。樹くんはなにも悪くない。むしろ、ずっと黙っていてごめんなさい」
「いや。相談したいと思える男じゃなかった俺が悪い」

 自分を責め続ける樹の心を少しでも軽くしたいと繭は言葉を重ねる。

「それに、大変なこともあったけど、旬太を産んでからの私はずっと幸せでした。もともと結婚願望もなかったから、むしろ理想の人生っていうか」

 実際、繭はシングルマザー生活にはなんの不満も抱いていなかった。憧れていた人の子どもを産み育てる、それだけで十分に幸せだった。
 樹を励ますつもりで言った言葉だったが、それを聞いた樹はずんと目に見えて落ち込んだ顔を見せる。ちらりと繭を見て、ぼやく。

「結婚願望ないって、今も?」

 繭はふふっと花がほころぶように笑う。

「形はなんでもいいんです。旬太と樹くんと一緒にいられたらそれだけで!」

 樹は軽く肩をすくめて苦笑する。

「俺は、めちゃくちゃ独占欲が強くて心配性だから……できたら永遠を誓いたいんだけど、ダメか?」
「それはえっと、ダメじゃないですけど」

 今までも十分に幸せだったのに、これ以上を望んでもいいのだろうか。
 繭の答えに樹は極上に甘い笑みを浮かべて、告げる。

「結婚して、繭。俺を繭の夫に、旬太の父親にしてください」
「はい!」

 キラキラと輝く未来に思いをはせて繭はゆっくりと目を閉じる。永遠を約束するキスは優しく、温かく、樹からの愛があふれていた。
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