極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「な、なんでしょう?」

 自分の身体ではやはりその気になれないのかと、繭は不安になる。だが、彼の答えは意外なものだった。

「俺、どっちかというとSなんだ」
「それは、なんとなくわかります」

 こうしてベッドをともにしなくても、それは普段の仕事ぶりからも察せられる。

『難攻不落のドS王子』繭の同僚であるパラリーガルたちの間でつけられた彼のあだ名だ。別に愛想が悪いわけではなく、むしろ爽やか営業スマイルは彼の十八番だが……高坂樹は誰にも心を開かないのだ。彼と他者との間にはそびえ立つ透明な壁があって、誰もそのなかに侵入することはできない。群がる女子たちに向ける眼差しは氷のように冷たく、言葉の端々に『うざい』という彼の本音が透けて見える。SかMかで言ったら、それは間違いなく前者だろう。

 樹はくっくっと肩を揺らす。

「その俺からすると、あんたの冷めた目はたまらなくそそる」

 繭はかすかに眉をひそめて首をひねる。

「それじゃMになっちゃうような……」

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