極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 新規のクライアントだろうかと、繭は満面の営業スマイルで出迎えたがそこにいたのはくたびれたスーツ姿の男性、十五時に来客予定の川口だった。繭はそっと自身の腕時計を確認する。時刻はまだ午後十四時だ。

「川口さん。えっと、約束は十五時と認識しておりましたが」
「え? あぁ、ごめんなさい、十四時と勘違いしていました」

 川口は手帳を開き、自分のミスを確認して顔をしかめた。離婚問題で疲れているのだろう、顔色も悪いし目の下には大きなクマが目立つ。
 彼を不憫に思った繭は、優しくほほ笑みながら言う。

「堂上はあと三十分もすれば戻りますので、よければこちらでお待ちになりますか」
「は、はいっ」

 川口はほっとした表情を見せ、事務所に入ってきた。彼にソファをすすめ、繭はお茶を準備する。お茶だけでは間が持たないだろうと自分のおやつに持参していたクッキーを二枚添えて彼に差し出す。クッキーに目を留めた彼はうれしそうに目を細める。
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