極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「妹尾さんはまだ若そうだし、独身ですか」
「――えぇ」

 微妙に間が空いてしまったにのは、理由がある。繭は独身ではあるが家族がいる、ひとり息子の旬太(しゅんた)だ。いわゆるシングルマザーというやつである。でも、そんな事情を聞かされても彼も困るだろうと思い、若い独身女性を演じることにした。

「ははっ。結婚は本当にね、慎重に考えたほうがいいですよ」

 川口は自虐的にそう言った。乾いた笑いが痛々しい。

「難しいですよね、結婚って」

 繭自身は今後も結婚する気はまったくないのでなんの心配もいらないのだが、一般論として当たり障りのない答えを返した。川口はがくりと肩を落としてうなだれる。

「こんなふうになるなんて、想像もしていなかったもんなぁ。平穏な家庭を守りたいだけなのに」

 繭は彼を元気づけようと明るい声を出す。

「雨はいつかやみますよ。悪いことのあとにはきっといいことがありますから」
「そう、かなぁ」

 懐疑的な川口を懸命に励ます。

「まずは奥さまと話し合いができるようにしましょう。堂上も私も全力でサポートします!」

 ほかに大きな案件もないし、当面は川口の依頼に全力で取り組めるはずだ。
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