極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「……妹尾さん、ありがとう。がんばります」

 ほんのりと目を潤ませている川口に繭はほほ笑み返す。

(案件が離婚問題一件のみなんて、事務所としては悲しすぎるんだけどね……)

「ただいま~」

 ちょうどそこに慎太郎が戻ってくる。表情から推測するかぎり、あまりいい仕事をゲットできたようには思えず、繭は小さく肩を落とす。

「タロ先生、川口さんがお見えですよ」

 慎太郎と一時間ほどの相談を終えた川口はいくぶんすっきりした顔で応接室を出てきた。

「先生、親身に話を聞いてくださってありがとうございました」
「いえいえ。もう少し、一緒にがんばりましょうね」

 経営者の資質にはやや欠けているが、弁護士としての慎太郎は有能だ。依頼人の気持ちをしっかりくみ取って、望む方向での解決策を提示する。難しい専門用語を使ったりせず、誰にでもわかるように説明するのもうまい。取り乱してとんでもない行動を起こす依頼人のことも決して見捨てたりせず、最後まで寄り添う。
(いい先生なんだよね。もっと売れっ子弁護士になれるはずなのになぁ)
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