極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 不快感は拭えないが、もう自分にはなんの関係もないことだ。ありさとの友情が復活することも二度とない。繭は思い出したくもない過去の記憶にしっかりと蓋をする。

「そう、それはおめでとう」

 冷めた声で短く告げて、繭はすっと彼から視線をそらした。が、卓也のほうはせっかく見つけたおもちゃとまだ遊びたいようだった。

「繭ちゃんは結婚の予定ないの? 同期とか後輩とか紹介してあげようか」

 露骨に小馬鹿にしてくる彼に、思わずかっとなり言い返してしまった。

「あなたに心配してもらうほど困ってないから」
「へぇ、彼氏いるの? どんな奴?」

 つまらない見栄なんて張るもんじゃない、それはわかっているのだが、もうあとの祭りだ。繭は妙な覚悟を決めて、卓也を見あげる。

「同じ職場の人よ。弁護士なの」

 ある人物を頭に思い浮かべながら、繭は言った。卓也は軽く目を見開いたかと思うと、次の瞬間、ぷっと大きく噴き出す。

「べ、弁護士って、嘘つくにしてももうちょっとリアリティないと誰も信じないって。だいたいさ、弁護士も最近はピンキリだしな~」
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