極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
そう思った瞬間、繭の胸がちくりと痛む。旬太は父親を知らずに育つのだ。そのことに対する罪悪感はどうしたって消すことはできない。もしかしたら樹は結婚して子どもが生まれているかもしれない。その子と旬太との環境の差を思うと、心がずんと重くなる。
(でも、きっと……妊娠を伝えていたら、産むことを許してはもらえなかった)
妊娠がわかったとき、彼はもうアメリカに発ったあとだったが、連絡手段がなかったわけではない。事務所に頼めば連絡を取ることは可能だったはず。繭がそれをしなかったのは、旬太を守るためだ。相続や財産分与、婚外子の難しさを熟知している彼が繭の出産を認めてくれるとは思えなかった。情にほだされてくれるような男ではない。だから、決して彼の耳に入らぬよう事務所の誰にも妊娠の事実を告げずに退職したのだ。
繭は抱っこ紐ごと旬太をぎゅっと抱き締める。
(ごめんね、旬太。私がパパの分まで旬太を大事にするからね!)
エレベーターが混雑していたため、繭は階段を使って一階におりることにした。するとこれまでおとなしくしていた旬太が急に「ふえぇ」とぐずり出した。周囲の視線がいっせいに繭に注がれる。繭は慌てて足を速めながら、旬太に声をかける。
「眠くなった? それともお腹空いたかな? もう帰るからね、大丈夫よ~」
(でも、きっと……妊娠を伝えていたら、産むことを許してはもらえなかった)
妊娠がわかったとき、彼はもうアメリカに発ったあとだったが、連絡手段がなかったわけではない。事務所に頼めば連絡を取ることは可能だったはず。繭がそれをしなかったのは、旬太を守るためだ。相続や財産分与、婚外子の難しさを熟知している彼が繭の出産を認めてくれるとは思えなかった。情にほだされてくれるような男ではない。だから、決して彼の耳に入らぬよう事務所の誰にも妊娠の事実を告げずに退職したのだ。
繭は抱っこ紐ごと旬太をぎゅっと抱き締める。
(ごめんね、旬太。私がパパの分まで旬太を大事にするからね!)
エレベーターが混雑していたため、繭は階段を使って一階におりることにした。するとこれまでおとなしくしていた旬太が急に「ふえぇ」とぐずり出した。周囲の視線がいっせいに繭に注がれる。繭は慌てて足を速めながら、旬太に声をかける。
「眠くなった? それともお腹空いたかな? もう帰るからね、大丈夫よ~」