極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「は、はぁ」

 卓也は名刺に書かれた『ミリガン&ジェイ法律事務所』の名前に目を丸くした。卓也も繭と同じく法学部出身なのだ。ふたりとも司法試験を目指すほどの実力ではなかったが、四大法律事務所の名前くらいは当然知っている。この名刺を前にしては、『弁護士だってピンキリ』とは到底言えないだろう。
 繭のほうはといえば……樹が自分の顔だけでなく、下の名前まで認識していたことに大きな衝撃を受けていた。

(嘘……私のこと知ってたの? ほとんどしゃべったことないし、パラリーガルは大勢いるのにさすが天才は違うな)

「えぇ……本当に繭ちゃんの彼氏なの」

 探るような目で卓也は繭と樹を見る。失礼な態度だが、それは仕方のないことだろう。エリート弁護士というだけでなく、樹は容姿もパーフェクトなのだ。一八〇センチ近い長身に小さな頭と長い手脚。顔立ちはモデルや俳優も顔負けのイケメンぶりだ。よくも悪くも平凡で目立つところのない自分と釣り合うとは繭だって思ってはいない。

「疑うなら証拠を見せようか」

 ふっとほほ笑んだ樹は、長い指でくいと繭の顎を持ちあげる。深みのあるノワールの瞳は、見つめていると吸い込まれてしまいそうだ。その美しい顔面がゆっくりと落ちてくる。

(え? まさか……)

「待っ――」
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