極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
(次回の予約は不要ってことは、やっぱり再構築がうまくいったのね)

 他人事ながら、繭はほっと胸を撫でおろした。事務所の儲けは減るだろうが、それでも依頼人の笑顔が見られるのは気分がいい。後味の悪い仕事の多い業界だからこそ、たまのハッピーエンドはうれしくなる。結局、繭も慎太郎と同じで根がお人好しなのだ。

「妹尾さん、本当にありがとうございました」

 生真面目におじぎする川口に繭は笑顔を向ける。

「いえいえ、奥さまと末永くお幸せ――」

 再構築を祝う繭の言葉を遮って、川口は清々しい表情で言う。

「妹尾さんと出会えたおかげで、きっぱり離婚する決意ができました!」
「えぇ?」

 繭の言葉は続かない。川口の台詞の前半も後半も繭には理解不能だ。

(やり直すんじゃなくて、離婚するの? それと私と、いったいなんの関係が?)

 軽いパニックにおちいっている繭などお構いなしに、川口は勝手に話を進めている。

「来月には離婚届を出すつもりです。なので、来月あらためてデートしましょう! 映画でも遊園地でも妹尾さんの行きたいところに付き合いますよ」
「いや、その……」
「あっ、もしかして年の差を気にしてますか? そんなの愛があればなんの問題もないですよ!」
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