極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 川口のまったく邪気のないニコニコ顔が繭には恐ろしい。話が通じる気がしない。

(川口さんの奥さん、ひどい人だなって思ってたけど、これはちょっと同情しちゃう。この手の人と一緒に暮らすのは大変そう……)

 どういう思考回路でそうなったのかさっぱり不明だが、川口は繭と思いが通じ合っていると信じているようなのだ。繭はキリキリ痛むこめかみを押さえて、できるだけ冷静な声を出した。

「川口さん。なにか誤解させてしまったら申し訳ないのですが、私はあなたとデートする気はまったくありませんので」

 繭の言葉に、川口は心底驚いたとでも言いたげにぽかんと口を開けた。その後、「あはは」と天井を見あげて笑う。やけに明るい笑い声がどこか不気味だ。

「か、川口さん?」
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