極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
川口はじっと繭を見つめ、抑揚のない声で言う。

「その子ども、なに?」
「あっ……あなっ、あなたには――」

『あなたには関係ない』

 そう毅然と言い放ちたかったのだが、恐怖でわななく唇では不可能だった。川口の腕がもう一度繭に向かって伸ばされる。

(怖いっ)

 繭はぎゅっと固く目をつむって、身体を縮こまらせる。

「汚い手で俺の妻に触れるな」

 耳に響いたその声を、繭はもう間違えることはなかった。おそるおそる瞼を持ちあげると、予想したとおりの人物が繭をかばうように間に割って入り、川口の腕をギリギリと締めあげている。

「な、なんだよ、お前」

 自分よりずっと背の高い樹に川口はひるんだようで、その声には狼狽がにじんでいる。樹は殺気だった瞳で川口をにらみつけ、声を荒らげた。

「それはこっちの台詞だ。人の妻と子になにをするつもりだった?」

 川口は目をパチパチと瞬かせて樹の背にかくまわれている繭を見る。

「妻と子って……妹尾さんは独身じゃ」
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