極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 柔らかなベッドに膝をついた彼が繭を見おろす。少し長めの前髪からのぞく美しい瞳、すっと通った鼻筋にシャープな顎のライン、形のよい薄い唇。彼の造形のすべてが繭の好みにぴたりとはまる。

(やっぱり、この世で一番好きな顔)

 この状況でも、いやこんな状況だからこそ、繭はあらためてそう思った。もちろん世界中の男性の顔をチェックしながら歩いたわけではないが……実際に歩いてみたとしても、きっと彼より好きな顔は見つからないだろう。
 その彼が、今、自分を純白のシーツの上に組み敷いているのだ。樹の両手が繭の頭の両横に置かれる。ぎっと、かすかにベッドがきしみ、彼はふっと笑んだ。ぞくりと肌が粟立つほどに色っぽい表情だ。

「今、なにを考えてた?」

 声も繭好みだ。高すぎず、低すぎない。落ち着いていて耳に優しく響く。繭は必死に虚勢を張って、内心の激しい動揺を悟られないようにする。

「その、高坂先生はかっこいいなと思っていました。声も素敵ですし」

 樹は皮肉げに鼻で笑う。

「そりゃ、どうも。あんた、俺のこと好きなの? のわりには冷静に見えるけど」
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