極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
 繭がそう説明すると、樹は拗ねたような顔でぼやく。

「なんだ。劣等感を抱いて損したな」

 繭はクスクスと笑い続けた。こんなにかわいい樹を見るのは初めてだ。

「劣等感なんて初体験なんじゃないですか?」

 これだけのルックス、そしてエリート弁護士。彼の人生で劣等感を抱く機会が思いつかない。樹は笑って首を横に振る。

「これまではな。最近は……まぁまぁあるよ」

 やや含みのある口調に繭は続きが気になったが、旬太がぐずり出したので会話はそこで中断になった。

「どうしたの、旬太?」
「前が混んできて水槽が見えないのかも」

 答えたのは樹だ。彼の言うとおり、カラフルな魚たちが泳ぐ大水槽の前は人だかりになってきている。これでは、小さな旬太の視界には人の脚しか映らないだろう。
 樹は旬太の腰をひょいと持ちあげて、肩車をする。「怖くないか?」と聞く樹に、旬太はうれしそうなはしゃぎ声を返す。背の高い樹の肩車は旬太にとっては遊園地のアトラクションみたいなものだ。

「楽しいみたいです」

 繭が言うと、「よかった」と樹は笑う。彼は旬太の脚を右手で支え、左手を繭のほうに伸ばした。

「ほら」
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