極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
「ん、はあっ」

 濃密なキスに息苦しさを覚えた繭は酸素を求めて、思わず息を吐く。目の前には樹の熱をはらんだ瞳があって、胸が切なく締めつけられる。

(この感情を自覚してはいけない……名前をつけてはダメ)

 たった一語で言い表すことのできるそれから、繭はなんとか目をそらそうとする。それなのに、樹は繭をどこまでも追いつめる。

「俺のひとりよがりな勘違いじゃないか、もう一度確かめさせて」
「あっ」

 角度を変えて、樹はまた繭の唇を奪う。優しく、そして激しくなるキスから、彼の思いがしっかりと伝わってきて繭は泣きたくなった。こうなるまで嘘を重ねてしまった自分の愚かさを心底呪ったが、すべて今さらだ。

(本当のことを伝えるのが怖い。樹くんに嫌われたくない)

 
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