極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
彼自身は『落ちぶれた』などとはこれっぽっちも思っていない、自信に満ちた表情からそれが伝わってくる。なんのことはない、空の覇者である鷹がその爪を少し隠しただけのことだったのだ。かつても今も、慎太郎は樹のはるか先を悠然と歩いている。
「繭ちゃん! この落雁、最高だったからまたお取り寄せしておいて~」
「健康診断に引っかかっても知りませんよ」
楽しそうに笑い合う慎太郎と繭の姿に、樹は不機嫌を隠せない。あの堂上慎太郎の仕事ぶりを繭はいつもそばで見ているのだ。彼と比べたら、自分なんてちっぽけに見えるかもしれない。これまで感じたことのない激しい焦燥感が樹をさいなむ。
一緒に暮らしはじめて、繭は少しずつ樹に心を開いてくれているように思う。だが、いつの間にか樹は強欲になっていた。それだけじゃ足りないと思ってしまうのだ。もっと、もっと欲しいと願ってしまう。
(頼むから、俺以外に笑いかけるなよ……)
慎太郎に向ける繭の笑顔に、樹の胸はチリチリとこげつく。樹は繭の恋人でもなんでもない。それどころか、憎まれていてもおかしくない人間だ。嫉妬できる立場にないことはわかっているのだが、それでも……あの笑顔を、柔らかな声音を、繭のすべてをひとり占めしたい。
今思えば、あの最初の夜から繭はほかの誰とも違う、特別な存在だった。
「繭ちゃん! この落雁、最高だったからまたお取り寄せしておいて~」
「健康診断に引っかかっても知りませんよ」
楽しそうに笑い合う慎太郎と繭の姿に、樹は不機嫌を隠せない。あの堂上慎太郎の仕事ぶりを繭はいつもそばで見ているのだ。彼と比べたら、自分なんてちっぽけに見えるかもしれない。これまで感じたことのない激しい焦燥感が樹をさいなむ。
一緒に暮らしはじめて、繭は少しずつ樹に心を開いてくれているように思う。だが、いつの間にか樹は強欲になっていた。それだけじゃ足りないと思ってしまうのだ。もっと、もっと欲しいと願ってしまう。
(頼むから、俺以外に笑いかけるなよ……)
慎太郎に向ける繭の笑顔に、樹の胸はチリチリとこげつく。樹は繭の恋人でもなんでもない。それどころか、憎まれていてもおかしくない人間だ。嫉妬できる立場にないことはわかっているのだが、それでも……あの笑顔を、柔らかな声音を、繭のすべてをひとり占めしたい。
今思えば、あの最初の夜から繭はほかの誰とも違う、特別な存在だった。