忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
 紗世と一緒だからだろうか。久しぶりに食事が美味しいと感じた。お腹が満たされると、不思議と元気になったような気もする。

「食べながら考えでたんだけど、やっぱりおかしいよね。その男は家に奥さんがいるのに、美琴ちゃんはその男に一途でいないといけないの? 相手が不誠実なんだし、美琴ちゃんも別に好きな人とかがいてもいいんじゃない? 美琴ちゃんにはもっと相応しい良い人がいるはずだよ」

 不倫のことで悩んでいるのに、そんな二股のようなことを出来るはずがない。

「美琴ちゃんはきっと愛してるって言われるとそう思い込んじゃうような呪い? 催眠術? にかけられちゃったんだね。目覚めるには王子様のキスみたいな何かが必要なのよ」
 
 今の現状から抜け出せるような恋になら堕ちたいとすら思う。

 美琴の様子を見ていた紗世は、おもむろにカバンの中を探り出す。

「美琴ちゃん、三年前のことをすごく引きずってるよね。本当は彼にもう一度会いたいって思ってるんじゃない?」

 まるで心の中を見透かされたようだった。そんなこと、毎日のように思ってる。あの時、違う選択をすべきだったんじゃないかって、どうにもならない過去を振り返ってしまう。

「三年前のあの日、なんであの人と二人きりになるのを許したのって怒ってたでしょ? でも私たちも簡単に了承したわけじゃないのよ」

 紗世は一枚の名刺をカウンターの上に置いた。
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