忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
その途端、美琴は尋人に抱きしめられる。
「一人で勝手に暴走すんなよ。だからこんな遠回りをするハメになるんだ」
彼の腕の中は温かいのに、美琴は実感が湧かずまだ不安感に包まれていた。
「もし朝起きた時に私がまだいたら、何か変わってた……?」
「……それは正直わからない。あの後すぐに仕事で海外に飛ばされたんだ。付き合ってすぐに遠距離なんて、きっと無理だったんじゃないかと思う」
その言葉は美琴を現実に引き戻す。そっか、未来は同じだったのか。そもそもこの出会い自体ががなければ良かったのかもしれない。この人との未来がないのなら、いっそのこと出会わなければ良かった。
「でもあの後何度も店に行って、マスターに美琴が来たら連絡してくれるように頼んでたんだ。恋人は難しくても、友達でもいいから繋がっていたいと思った」
「……まさか今日お店に来たのって……」
「マスターが連絡くれた」
「……なんて記憶力。三年前にたった一度来店しただけのこんな平凡な顔を覚えていてくれただなんて……」
「まぁ接客業だし。でもマスターのおかげでこうして再会出来た」
美琴は尋人の胸を両手で押して離れようとする。
「でも……この再会って必要だった? どうせこの先なんてないんだし……」
「あるよ。なかったのは三年前の話」
尋人は美琴をソファに押し倒すと、何も言えなくなるほど唇を押し付けた。