忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
二人の朝
 朝日が眩しい。まだ覚めない頭の中で美琴は思った。

 その時背後から抱きしめられ、ようやく頭がはっきりとした。なのに、体がだるくて動けない。

「……おはようございます」
「おはよう。体は大丈夫?」
「めちゃくちゃだるいです……」

 背中で感じる笑い声がくすぐったい。

 今どんな顔をしているの? 美琴は気になって寝返りを打つと、尋人の優しい笑顔が目の前に現れる。

 尋人は美琴の額にキスをしてから、強く抱きしめた。

「……またいなくなってたらどうしようかと思った」
「あの時はそういう考えしか浮かばなかったから……」
「処女の女の子と遊びって? それは確かに最低な男だな」
「だって……。でもあなたの気持ちを知って後悔してる。ごめんなさい……」

 尋人は美琴の体を愛おしそうに、優しく撫でていく。

「ほら、一つ誤解が解けた。やっぱり会話って大事だな。お前といるとついあっち方向に行っちゃうんだけど」

 あっち方向と言われ、美琴は恥ずかしくて両手で顔を覆う。しかしそれは美琴も同じで、キスをされるだけで、まるで火がついたかのように尋人を求めてしまう。前回といい、この人は私の導火線の場所を知っているようだ。

「で昨日の続きだけど、ここで一緒に暮らさない? 毎日話して、まぁずっと一緒にいたらお互いの良いところも悪いところも見えるとは思うけど、それでも無駄にした三年分を取り戻したい。それに美琴、三カ月付き合ったその男より、たった二晩一緒にいた俺の方が好きだろ?」
「……どこからくるんですか、その自信は」

 否定はしない。元々妻がいるということをカミングアウトされてから、あの男への気持ちは少しずつ冷めていた。そこにずっと引きずっていた人が現れれば、こうなることは必然だった。
< 20 / 63 >

この作品をシェア

pagetop