忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
期待をしていたわけじゃないけど……。でもあんなふうに脱がされたから少し期待してしまったのかもしれない。
それなのにただ二人でお風呂に入って出るだけなんて……。
彼なりに気を遣ってくれたのかもしれない。でも本当は尋人の肌に触れたいなんて、恥ずかしくて言えない。
しかしそのモヤモヤした気持ちが、先程の電話のことを紛らわせてくれているのも事実だった。
着替えを済ませてリビングに行くと、尋人がテレビの前で何か準備をしていた。
「これから何かするの?」
尋人はソファに座ってテレビを何やら操作すると、画面にはたくさんの海外ドラマが表示された。
「明日早いから一気見は出来ないけど、なんでも好きなものを見ていいぞ」
テレビの画面いっぱいに映し出される海外ドラマの数々に美琴の目が輝いた。
「レンタル行かなくてもドラマが見られるやつ?」
「そう。新しいのみてもいいし、シーズン途中のがあれば続きを見る?」
尋人の説明も聞かず、美琴は画面を食い入るように見つめている。
「……このFBIのか海軍のやつ……どっちもシーズン途中までしか見られてないの……どっちにしよう……」
少しは気分転換が出来たのかな。そう思うと尋人は少し安心した。
「美琴はミステリー好き?」
「あぁ……そうかもしれない。恋愛ものとかあまり見ないかな」
「ふーん……。ちなみに俺はどちらも最新シーズンまで知ってる」
「えっ、なんで⁈」
「だって俺、ずっとアメリカにいたし」
あぁ、そうだった。ということは英語もわかるんだ。今さら環境の違いを嘆いても仕方ないけど、住む世界も育ってきた環境もかなり違うんだろうな。
「じゃあFBIの方にしようかな。もう完結してるんでしょ? シーズン続いてると気になっちゃうし」
「了解」
すると尋人はソファに座ったまま足を開くと、その間を指差す。まるでここに座れと言っているようだった。
美琴は少し戸惑いながらも、尋人の指差す場所に腰掛ける。予想していたことだけど、後ろから抱きしめられるとくすぐったい。
苦しい時、誰かがそばにいてくれることがこんなに心強いとは思わなかった。
「どこから見てないの?」
「シーズン12からでお願いします」
「はいはい」
わざとやっているんじゃないかと思うくらい耳元近くで響く尋人の声は、とても優しく美琴を包み込む。
時折尋人の手が美琴の頭や頬を撫で、小動物的扱いにも感じたが、それはそれで心地良い……つい力が抜け、尋人に身を任せてしまう。
「……尋人の優しさって、私のことを良くも悪くもする……」
「どういう意味?」
「優しくされると嬉しくなって、いろいろ頑張ろうって前向きになれるの。でも同時に、あなたがいなくなったらどうしようって不安にもなる……」
それは三年前にも感じたものだった。あの夜が幸せだったから怖くなった。今も同じような想いに駆られている。
「俺は何回も美琴に愛してるって言ってるだろ? 大丈夫、嘘じゃないから。ずっとそばにいるよ。俺のこと信じて、甘えてさ、もっと自信持っていいんだ」
テレビの画像が切り替わり、見慣れたオープニングが始まる。しかし美琴はなんとなく画面を見ているだけで、ストーリーが頭に入って来なかった。
尋人はあの人のことを詳しく聞いてこない。きっと私が話すまで聞かないつもりなんだろう。
話さなくてもいい気がするのに、包み隠さず話してスッキリしたい自分もいる。
美琴の体を抱きしめる尋人の手をぎゅっと掴んだ。
「美琴?」
「……このままちょっとおしゃべりしてもいい?」
「……もちろん」
美琴は小さく深呼吸をすると口を開いた。
「さっきの電話の相手のこと……こんな話、尋人は聞きたくない……?」
「……美琴自身が聞かれたくないんじゃないのか?」
「うん、初めはそうだった。私の嫌な部分を見せて嫌われるのが怖くて……。でも秘密にして、バレた時に嫌われるのはもっと怖い。今ならまだ嫌われても立ち直れる気がするから……」
尋人は何も言わない代わりに、美琴の手を取り握り返す。それを了承と受け取ると、美琴は意を決し口を開いた。
それなのにただ二人でお風呂に入って出るだけなんて……。
彼なりに気を遣ってくれたのかもしれない。でも本当は尋人の肌に触れたいなんて、恥ずかしくて言えない。
しかしそのモヤモヤした気持ちが、先程の電話のことを紛らわせてくれているのも事実だった。
着替えを済ませてリビングに行くと、尋人がテレビの前で何か準備をしていた。
「これから何かするの?」
尋人はソファに座ってテレビを何やら操作すると、画面にはたくさんの海外ドラマが表示された。
「明日早いから一気見は出来ないけど、なんでも好きなものを見ていいぞ」
テレビの画面いっぱいに映し出される海外ドラマの数々に美琴の目が輝いた。
「レンタル行かなくてもドラマが見られるやつ?」
「そう。新しいのみてもいいし、シーズン途中のがあれば続きを見る?」
尋人の説明も聞かず、美琴は画面を食い入るように見つめている。
「……このFBIのか海軍のやつ……どっちもシーズン途中までしか見られてないの……どっちにしよう……」
少しは気分転換が出来たのかな。そう思うと尋人は少し安心した。
「美琴はミステリー好き?」
「あぁ……そうかもしれない。恋愛ものとかあまり見ないかな」
「ふーん……。ちなみに俺はどちらも最新シーズンまで知ってる」
「えっ、なんで⁈」
「だって俺、ずっとアメリカにいたし」
あぁ、そうだった。ということは英語もわかるんだ。今さら環境の違いを嘆いても仕方ないけど、住む世界も育ってきた環境もかなり違うんだろうな。
「じゃあFBIの方にしようかな。もう完結してるんでしょ? シーズン続いてると気になっちゃうし」
「了解」
すると尋人はソファに座ったまま足を開くと、その間を指差す。まるでここに座れと言っているようだった。
美琴は少し戸惑いながらも、尋人の指差す場所に腰掛ける。予想していたことだけど、後ろから抱きしめられるとくすぐったい。
苦しい時、誰かがそばにいてくれることがこんなに心強いとは思わなかった。
「どこから見てないの?」
「シーズン12からでお願いします」
「はいはい」
わざとやっているんじゃないかと思うくらい耳元近くで響く尋人の声は、とても優しく美琴を包み込む。
時折尋人の手が美琴の頭や頬を撫で、小動物的扱いにも感じたが、それはそれで心地良い……つい力が抜け、尋人に身を任せてしまう。
「……尋人の優しさって、私のことを良くも悪くもする……」
「どういう意味?」
「優しくされると嬉しくなって、いろいろ頑張ろうって前向きになれるの。でも同時に、あなたがいなくなったらどうしようって不安にもなる……」
それは三年前にも感じたものだった。あの夜が幸せだったから怖くなった。今も同じような想いに駆られている。
「俺は何回も美琴に愛してるって言ってるだろ? 大丈夫、嘘じゃないから。ずっとそばにいるよ。俺のこと信じて、甘えてさ、もっと自信持っていいんだ」
テレビの画像が切り替わり、見慣れたオープニングが始まる。しかし美琴はなんとなく画面を見ているだけで、ストーリーが頭に入って来なかった。
尋人はあの人のことを詳しく聞いてこない。きっと私が話すまで聞かないつもりなんだろう。
話さなくてもいい気がするのに、包み隠さず話してスッキリしたい自分もいる。
美琴の体を抱きしめる尋人の手をぎゅっと掴んだ。
「美琴?」
「……このままちょっとおしゃべりしてもいい?」
「……もちろん」
美琴は小さく深呼吸をすると口を開いた。
「さっきの電話の相手のこと……こんな話、尋人は聞きたくない……?」
「……美琴自身が聞かれたくないんじゃないのか?」
「うん、初めはそうだった。私の嫌な部分を見せて嫌われるのが怖くて……。でも秘密にして、バレた時に嫌われるのはもっと怖い。今ならまだ嫌われても立ち直れる気がするから……」
尋人は何も言わない代わりに、美琴の手を取り握り返す。それを了承と受け取ると、美琴は意を決し口を開いた。