忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
あなたが好き
ベッドの上に寝かされ、美琴を包み込んでいた尋人の体の温かさが離れたことで、美琴はふっと目を覚ます。
「あれっ……」
「あっ、悪い。目、覚めちゃった? 起きないように気をつけたつもりだったんだけど……」
寝室は薄暗く、美琴の頭は夢現だった。
尋人はベッドに腰掛けると、美琴をじっと見つめる。
美琴は回らない頭をなんとか奮い立たせ、何があったのか思い出そうとした。
「私……あのバーにいたよね」
「そう。美琴が飲み過ぎて寝ちゃったから、俺が藤盛さんに呼び出された」
「えっ、仕事中だったよね⁈ 大丈夫だった?」
起き上がろうとする美琴を制し、尋人は彼女の鼻をぎゅっとつまむ。
「はっ⁈」
「……お前さぁ、なんで一人で潰れるまで飲んでんの? 今までそんなことなかったよな。なんかあった?」
尋人の顔が笑っていないことは、薄暗い部屋の中でもわかった。
どうしよう……怒ってる? それとも呆れてる?
美琴は唇をぎゅっと噛み締める。
「仕事がね、今日は立て込んじゃって……すごく忙しくて残業になっちゃったの。尋人は会食だし、じゃあ食べて帰ろうかなって思って……バーに歩いて行ったの……」
「で?」
尋人の言葉が冷たく感じる。ただあの時の光景を思い出すと、急に胸が苦しくなった。
「お店に着く前に……尋人を見かけたの。いろんな人がいたし、きっと会食だろうなっていうのはわかった」
外にいた時というと、二次会のお店に入る前だろうか。あそこを見られていたのか。気付かなかった。
美琴は寝返りを打ち、尋人に背を向ける。顔を見て話す自信がなくなってしまったのだ。
「一緒にいた女の人が尋人の胸元に触って、ネクタイを直したの……それを見たらなんか悔しくて悲しくて……」
黙って聞いていた尋人は、話が予想外の方向に進みだしたことに気付き動揺した。
「仕事だってわかってるんだけど、なんかモヤモヤしちゃって……」
おかしいぞ。真剣な話をしているのに、なんで俺はこんなに浮かれた気分になってんだ。
一応確認しておくか。
「つまり……それは……ヤキモチを妬いたと?」
美琴は頷く。子どもっぽいって思われたかな。尋人の顔を見ることが出来なかった。
尋人は身悶えする。美琴の奴め、なんて破壊力を持ってるんだ。
「美琴……もうだめだ……俺も限界……」
呆れられた……美琴がそう思った瞬間、尋人に抱き寄せられたかと思うと、強い力で組み敷かれる。
いつかのように激しく、何度も何度も口元にを塞がれ、舌が熱く絡み合う。
どうしよう……すごく気持ちいい。こういうのを待ってた。
唇が離れた。キスだけで息が切れる。
「美琴のせいだからな……もっと大人でいたかったのに、お前が俺を煽るから……まともじゃいられなくなるんだよ……!」
「……それの何がいけないの? 私はもっと激しく求めたいし、求められたい……。お願い、もっとキスして……」
美琴の言葉を聞いて、尋人の理性の糸がプツンと切れる。
あぁ、なんだ。みんなの言う通りだった。そのままの俺で良かったんだ。
美琴の足を広げ、間に自分の体を滑り込ませる。
「いいのか? 今日は優しく出来ないかも……」
「知らなかった? 私、激しい尋人も好きなの……」
あーあ、美琴は簡単に俺のスイッチを入れるんだから……。尋人は美琴の唇を塞ぎ、熱い吐息が漏れる中、何度も何度も甘美な美琴の中に身を沈めた。
* * * *
「……お風呂に入るの忘れちゃった……」
「明日でいいよ……言っとくけど、俺はまだ終われないから……」
「うふふ……そういう尋人、すごく好き……」
尋人の上にうつ伏せで重なり合っていると、体全てが触れ合っているようで心地良かった。
「頑張って抑えてだんだけどなぁ。まさか美琴がこっちの方が好きだなんて思わなかった……」
クスクス笑う尋人の唇を美琴が塞いだ。
「最近あまりお喋りもしてくれないし……優しいセックスも好きだけど、前に比べたら淡白な気がして、飽きられちゃってるんじゃないかって少し怖かった……」
「……お前を大事にしたくて、俺の欲望のまま抱いたら美琴を傷付けちゃう気がしたから、わざと大人ぶってみたんだけどなぁ。それが逆に美琴を不安にさせてるとは思いもしなかった」
「最初に言ったじゃない? 本心で話そうって。尋人も私も嘘はついてないけど、ちょっと言葉が足りない気がするの」
「……俺、かなりわがままだけどいいの?」
「もちろん、どんと来いよ!」
「美琴の前じゃ、性欲抑えられないんだけど」
「TPOをわきまえてくれれば、私だって尋人に触られるのは嫌じゃないもの」
尋人は嬉しそうに美琴を抱き寄せた。
「なんだ、めちゃくちゃ簡単なことだったんだなぁ。早く伝えれば良かった」
美琴も尋人の体を抱きしめる。尋人の匂いを思い切り吸い込むと、不思議と安心感が広がる。
「昨日ね、尋人が誰かに触られてるって気付いて、どうしようもなく嫌な気分になったの……。私いつの間にか独占欲が強くなってたみたい……」
「私の尋人に触らないで〜とか思っちゃった?」
尋人に言われて、美琴は顔を真っ赤にして下を向いた。
「図星?」
いつの間にかこんなに尋人を愛してしまっていた。だからこそわかったこともある。
「私、尋人のことが好き……」
「知ってる。俺も好きだよ」
「うん……だから気付いたことがあるの」
美琴は不倫のことを尋人に叱責された夜を思い出す。
「前に一番不幸なのは何も知らない奥さんだ。信じている人が自分以外の女もずっと抱いていたなんて知ったらどんな気持ちだろうなって、尋人は私に言ったの、覚えてる?」
「言った……」
「今日たかがネクタイを直されてただけなのに、すごく嫌な気持ちになった。もしあなたが他の女の人とって考えたら、私はきっと正気を保てないと思う……」
あなたという愛する人が出来て、あなたを信じたいと思った。そう思った人に裏切られるのは何より辛い。
再び尋人にベッドに寝かされる。尋人は優しく微笑み、美琴に問いかける。
「美琴は一体どうなりたいの?」
美琴はクスクス笑う。前に聞かれた時は不幸のどん底にいて、この質問はすごく苦しかった。
「私は尋人のそばで幸せになりたい……」
「うん、なかなかいい答えだ」
「本当? じゃあご褒美欲しいな……」
美琴は尋人の頬を両手で挟んで自分の方に引き寄せキスをする。
「……これだと俺へのご褒美になりかねないんだけど」
「いいの。私のご褒美でもあるんだから」
そう言いながらまた激しく求め合うのだった。
「あれっ……」
「あっ、悪い。目、覚めちゃった? 起きないように気をつけたつもりだったんだけど……」
寝室は薄暗く、美琴の頭は夢現だった。
尋人はベッドに腰掛けると、美琴をじっと見つめる。
美琴は回らない頭をなんとか奮い立たせ、何があったのか思い出そうとした。
「私……あのバーにいたよね」
「そう。美琴が飲み過ぎて寝ちゃったから、俺が藤盛さんに呼び出された」
「えっ、仕事中だったよね⁈ 大丈夫だった?」
起き上がろうとする美琴を制し、尋人は彼女の鼻をぎゅっとつまむ。
「はっ⁈」
「……お前さぁ、なんで一人で潰れるまで飲んでんの? 今までそんなことなかったよな。なんかあった?」
尋人の顔が笑っていないことは、薄暗い部屋の中でもわかった。
どうしよう……怒ってる? それとも呆れてる?
美琴は唇をぎゅっと噛み締める。
「仕事がね、今日は立て込んじゃって……すごく忙しくて残業になっちゃったの。尋人は会食だし、じゃあ食べて帰ろうかなって思って……バーに歩いて行ったの……」
「で?」
尋人の言葉が冷たく感じる。ただあの時の光景を思い出すと、急に胸が苦しくなった。
「お店に着く前に……尋人を見かけたの。いろんな人がいたし、きっと会食だろうなっていうのはわかった」
外にいた時というと、二次会のお店に入る前だろうか。あそこを見られていたのか。気付かなかった。
美琴は寝返りを打ち、尋人に背を向ける。顔を見て話す自信がなくなってしまったのだ。
「一緒にいた女の人が尋人の胸元に触って、ネクタイを直したの……それを見たらなんか悔しくて悲しくて……」
黙って聞いていた尋人は、話が予想外の方向に進みだしたことに気付き動揺した。
「仕事だってわかってるんだけど、なんかモヤモヤしちゃって……」
おかしいぞ。真剣な話をしているのに、なんで俺はこんなに浮かれた気分になってんだ。
一応確認しておくか。
「つまり……それは……ヤキモチを妬いたと?」
美琴は頷く。子どもっぽいって思われたかな。尋人の顔を見ることが出来なかった。
尋人は身悶えする。美琴の奴め、なんて破壊力を持ってるんだ。
「美琴……もうだめだ……俺も限界……」
呆れられた……美琴がそう思った瞬間、尋人に抱き寄せられたかと思うと、強い力で組み敷かれる。
いつかのように激しく、何度も何度も口元にを塞がれ、舌が熱く絡み合う。
どうしよう……すごく気持ちいい。こういうのを待ってた。
唇が離れた。キスだけで息が切れる。
「美琴のせいだからな……もっと大人でいたかったのに、お前が俺を煽るから……まともじゃいられなくなるんだよ……!」
「……それの何がいけないの? 私はもっと激しく求めたいし、求められたい……。お願い、もっとキスして……」
美琴の言葉を聞いて、尋人の理性の糸がプツンと切れる。
あぁ、なんだ。みんなの言う通りだった。そのままの俺で良かったんだ。
美琴の足を広げ、間に自分の体を滑り込ませる。
「いいのか? 今日は優しく出来ないかも……」
「知らなかった? 私、激しい尋人も好きなの……」
あーあ、美琴は簡単に俺のスイッチを入れるんだから……。尋人は美琴の唇を塞ぎ、熱い吐息が漏れる中、何度も何度も甘美な美琴の中に身を沈めた。
* * * *
「……お風呂に入るの忘れちゃった……」
「明日でいいよ……言っとくけど、俺はまだ終われないから……」
「うふふ……そういう尋人、すごく好き……」
尋人の上にうつ伏せで重なり合っていると、体全てが触れ合っているようで心地良かった。
「頑張って抑えてだんだけどなぁ。まさか美琴がこっちの方が好きだなんて思わなかった……」
クスクス笑う尋人の唇を美琴が塞いだ。
「最近あまりお喋りもしてくれないし……優しいセックスも好きだけど、前に比べたら淡白な気がして、飽きられちゃってるんじゃないかって少し怖かった……」
「……お前を大事にしたくて、俺の欲望のまま抱いたら美琴を傷付けちゃう気がしたから、わざと大人ぶってみたんだけどなぁ。それが逆に美琴を不安にさせてるとは思いもしなかった」
「最初に言ったじゃない? 本心で話そうって。尋人も私も嘘はついてないけど、ちょっと言葉が足りない気がするの」
「……俺、かなりわがままだけどいいの?」
「もちろん、どんと来いよ!」
「美琴の前じゃ、性欲抑えられないんだけど」
「TPOをわきまえてくれれば、私だって尋人に触られるのは嫌じゃないもの」
尋人は嬉しそうに美琴を抱き寄せた。
「なんだ、めちゃくちゃ簡単なことだったんだなぁ。早く伝えれば良かった」
美琴も尋人の体を抱きしめる。尋人の匂いを思い切り吸い込むと、不思議と安心感が広がる。
「昨日ね、尋人が誰かに触られてるって気付いて、どうしようもなく嫌な気分になったの……。私いつの間にか独占欲が強くなってたみたい……」
「私の尋人に触らないで〜とか思っちゃった?」
尋人に言われて、美琴は顔を真っ赤にして下を向いた。
「図星?」
いつの間にかこんなに尋人を愛してしまっていた。だからこそわかったこともある。
「私、尋人のことが好き……」
「知ってる。俺も好きだよ」
「うん……だから気付いたことがあるの」
美琴は不倫のことを尋人に叱責された夜を思い出す。
「前に一番不幸なのは何も知らない奥さんだ。信じている人が自分以外の女もずっと抱いていたなんて知ったらどんな気持ちだろうなって、尋人は私に言ったの、覚えてる?」
「言った……」
「今日たかがネクタイを直されてただけなのに、すごく嫌な気持ちになった。もしあなたが他の女の人とって考えたら、私はきっと正気を保てないと思う……」
あなたという愛する人が出来て、あなたを信じたいと思った。そう思った人に裏切られるのは何より辛い。
再び尋人にベッドに寝かされる。尋人は優しく微笑み、美琴に問いかける。
「美琴は一体どうなりたいの?」
美琴はクスクス笑う。前に聞かれた時は不幸のどん底にいて、この質問はすごく苦しかった。
「私は尋人のそばで幸せになりたい……」
「うん、なかなかいい答えだ」
「本当? じゃあご褒美欲しいな……」
美琴は尋人の頬を両手で挟んで自分の方に引き寄せキスをする。
「……これだと俺へのご褒美になりかねないんだけど」
「いいの。私のご褒美でもあるんだから」
そう言いながらまた激しく求め合うのだった。