忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
待ち伏せ
こんなに清々しい気持ちの朝はいつぶりだろう。美琴は自然と笑顔になれた。
土日のほとんどを尋人とイチャイチャしていたこともあり、別の意味でもスッキリしているし、今ならなんでも打ち明けられる気がする。
美琴は身支度を終えると、尋人のいる書斎をノックした。
「じゃあ私先に出るね」
今日の尋人はダークグレーのスーツに身を包んでいた。今日も素敵だ。
「送んなくていいの?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
尋人はキスを寸止めにして、ニッと笑う。
「なんか言いたいことあるだろ?」
わかってて言わせたいだけでしょ……と思いながらも、つい口にしてしまう。
「スーツの尋人、カッコよくて好き……」
尋人は嬉しそうに微笑み、そしてようやくキスに辿り着く。すぐにキスしてくれてもいいのに。でもそんな尋人も好きだから仕方ない。
「じゃあ行ってきま〜す」
「いってらっしゃい。あっ、今日の帰りは迎えに行くから、一緒に帰ろう」
「うん、わかった。終わる頃に連絡するね!」
不思議。ずっと一緒にいるのに、こんなにも離れがたいなんて……。
* * * *
更衣室に入ると、夏実が既に身支度を整えて、ベンチに座っていた。
「おはよう、夏実」
すると夏実は驚いて顔を上げる。
「お、おはよう」
いつもの元気な夏実ではなく、どこか落ち着かない様子だった。
目元にはクマができてるし、顔色も悪かった。様子がおかしいのは明白だった。
「夏実、顔色悪いけど大丈夫?」
「えっ、あっ、うん……大丈夫!」
「本当? 無理しないでよ。しんどかったら言ってね」
「うん、ありがとう……」
その時ふと金曜日の会話を思い出す。
そういえばデートって言ってたよね。彼と何かあったりしたのかな……。
気にはなったが、今日の夏美は話しかけられたくないような空気を纏っている。とりあえず夏実から話題が出るまではそっとしておこう。
美琴もカバンをしまい、いつもの制服へと着替える。所々つけられてしまったキスマークを隠すように慌ててシャツを着る。
「美琴、彼氏いるんだ〜……」
「えっ⁈」
「背中のそれってキスマークでしょ。もうバレバレだよ」
前だけじゃなかったんだ。見えない場所のものまではフォロー出来ない。
「あぁ、うん、一応ね〜」
今までそういう話を避けてきただけに気まずかった。しかも夏実の元気のない理由が彼氏にあるのだとすれば尚更だ。
「いいね〜ラブラブじゃん」
「まぁ仲良くやってるかな……」
この返答は間違っていないだろうか。正解が導き出せずに悶々としてしまう。
「あぁっ、もうすぐ始業時間だ! そろそろ行こうか」
「本当だ。今日も頑張るか〜」
二人は揃って会計受付に向かったが、美琴はお昼休憩に向けて不安が残る朝となった。
* * * *
お昼休憩の時間がやってきた。
「夏実、今日も食堂行く?」
「うん」
夏実の返事を聞いて、二人は立ち上がる。
まぁ本当に体調が悪いだけかもしれないし、食事の様子次第では早退させることも頭に入れておいた方がいいのかもしれない。
食堂に到着すると、少し時間がずれていることもあり、人はまばらだった。
美琴は親子丼、夏実はかけそばを注文して席に着く。しかし夏実はため息をつき、なかなか箸が進まない。
「夏実、やっぱり体調悪いの? 無理しないで帰っても大丈夫だよ」
「ん……ごめん、大丈夫だから」
大丈夫そうには見えないけど……。心配しつつも、自分の親子丼を食べ進める。
「美琴は今の彼と付き合ってどのくらい?」
「わ、私? えーっと……知り合ってからは長いんだけど、付き合ってからは一ヶ月くらいかな」
「友達から昇格したの?」
「うん、まぁそんな感じ」
「そっか……あれだけのキスマークだしね、今はラブラブ期なんだね」
どれだけのキスマークなんだろうか。着替えるのが不安になる。
「美琴は今幸せ?」
この質問、最近も聞いたな……。こういう会話になっているということは、夏実の様子がおかしい原因はやはり恋愛絡みなのかもしれない。
「うん、幸せ……」
「ふ〜ん……いいなぁ。ちょっと羨ましい。私も幸せって言いたいよ」
「……でも私も最近までは夏実みたいに思ってたよ。今は……彼のおかげでそう言えるようになっただけ」
「そっか……」
私が辛かった時、夏実はそっとしておいてくれた。それも優しさ。でも私は夏実をこのままにしていいのかわからなかった。
「あの……何かあったのなら話を聞くよ? それとも放っておいて欲しい?」
自分では判断がつかず、夏実に問いかける。
「そうだなぁ……今は放っておいて欲しい。でもいつか聞いて欲しい時が来たら、その時は聞いてね」
「もちろん!」
夏実の顔にようやく明るさが戻る。完全ではないけど、その兆しが見えただけでも安心した。
土日のほとんどを尋人とイチャイチャしていたこともあり、別の意味でもスッキリしているし、今ならなんでも打ち明けられる気がする。
美琴は身支度を終えると、尋人のいる書斎をノックした。
「じゃあ私先に出るね」
今日の尋人はダークグレーのスーツに身を包んでいた。今日も素敵だ。
「送んなくていいの?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
尋人はキスを寸止めにして、ニッと笑う。
「なんか言いたいことあるだろ?」
わかってて言わせたいだけでしょ……と思いながらも、つい口にしてしまう。
「スーツの尋人、カッコよくて好き……」
尋人は嬉しそうに微笑み、そしてようやくキスに辿り着く。すぐにキスしてくれてもいいのに。でもそんな尋人も好きだから仕方ない。
「じゃあ行ってきま〜す」
「いってらっしゃい。あっ、今日の帰りは迎えに行くから、一緒に帰ろう」
「うん、わかった。終わる頃に連絡するね!」
不思議。ずっと一緒にいるのに、こんなにも離れがたいなんて……。
* * * *
更衣室に入ると、夏実が既に身支度を整えて、ベンチに座っていた。
「おはよう、夏実」
すると夏実は驚いて顔を上げる。
「お、おはよう」
いつもの元気な夏実ではなく、どこか落ち着かない様子だった。
目元にはクマができてるし、顔色も悪かった。様子がおかしいのは明白だった。
「夏実、顔色悪いけど大丈夫?」
「えっ、あっ、うん……大丈夫!」
「本当? 無理しないでよ。しんどかったら言ってね」
「うん、ありがとう……」
その時ふと金曜日の会話を思い出す。
そういえばデートって言ってたよね。彼と何かあったりしたのかな……。
気にはなったが、今日の夏美は話しかけられたくないような空気を纏っている。とりあえず夏実から話題が出るまではそっとしておこう。
美琴もカバンをしまい、いつもの制服へと着替える。所々つけられてしまったキスマークを隠すように慌ててシャツを着る。
「美琴、彼氏いるんだ〜……」
「えっ⁈」
「背中のそれってキスマークでしょ。もうバレバレだよ」
前だけじゃなかったんだ。見えない場所のものまではフォロー出来ない。
「あぁ、うん、一応ね〜」
今までそういう話を避けてきただけに気まずかった。しかも夏実の元気のない理由が彼氏にあるのだとすれば尚更だ。
「いいね〜ラブラブじゃん」
「まぁ仲良くやってるかな……」
この返答は間違っていないだろうか。正解が導き出せずに悶々としてしまう。
「あぁっ、もうすぐ始業時間だ! そろそろ行こうか」
「本当だ。今日も頑張るか〜」
二人は揃って会計受付に向かったが、美琴はお昼休憩に向けて不安が残る朝となった。
* * * *
お昼休憩の時間がやってきた。
「夏実、今日も食堂行く?」
「うん」
夏実の返事を聞いて、二人は立ち上がる。
まぁ本当に体調が悪いだけかもしれないし、食事の様子次第では早退させることも頭に入れておいた方がいいのかもしれない。
食堂に到着すると、少し時間がずれていることもあり、人はまばらだった。
美琴は親子丼、夏実はかけそばを注文して席に着く。しかし夏実はため息をつき、なかなか箸が進まない。
「夏実、やっぱり体調悪いの? 無理しないで帰っても大丈夫だよ」
「ん……ごめん、大丈夫だから」
大丈夫そうには見えないけど……。心配しつつも、自分の親子丼を食べ進める。
「美琴は今の彼と付き合ってどのくらい?」
「わ、私? えーっと……知り合ってからは長いんだけど、付き合ってからは一ヶ月くらいかな」
「友達から昇格したの?」
「うん、まぁそんな感じ」
「そっか……あれだけのキスマークだしね、今はラブラブ期なんだね」
どれだけのキスマークなんだろうか。着替えるのが不安になる。
「美琴は今幸せ?」
この質問、最近も聞いたな……。こういう会話になっているということは、夏実の様子がおかしい原因はやはり恋愛絡みなのかもしれない。
「うん、幸せ……」
「ふ〜ん……いいなぁ。ちょっと羨ましい。私も幸せって言いたいよ」
「……でも私も最近までは夏実みたいに思ってたよ。今は……彼のおかげでそう言えるようになっただけ」
「そっか……」
私が辛かった時、夏実はそっとしておいてくれた。それも優しさ。でも私は夏実をこのままにしていいのかわからなかった。
「あの……何かあったのなら話を聞くよ? それとも放っておいて欲しい?」
自分では判断がつかず、夏実に問いかける。
「そうだなぁ……今は放っておいて欲しい。でもいつか聞いて欲しい時が来たら、その時は聞いてね」
「もちろん!」
夏実の顔にようやく明るさが戻る。完全ではないけど、その兆しが見えただけでも安心した。