忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
決着
昨夜は尋人と何度も体を重ね、そのまま眠りに落ちてしまった。
スマホを見ることはなかったが、山脇から連絡は来ていなかった。
美琴は家を出る前に、アクセサリーボックスの中から小さな小箱を取り出すとカバンにしまう。
「美琴、行くよ」
「はーい」
尋人に呼ばれ、玄関まで急ぐ。
今日でしっかり終わらせないと。美琴は改めて決意した。
* * * *
仕事が終わり、美琴は慌ただしく病院を出た。外で尚政の車が待っており、運転席の尚政に会釈をしてから後部座席に乗り込む。
「お疲れ様。何もなかった?」
「うん、大丈夫。千葉さんもいつもありがとうございます」
「俺は大丈夫だよ~」
尚政の明るい声が響くと同時に車が走り出す。
尋人の手が美琴の手を握る。言葉はなくても、それだけで尋人の想いが伝わってくるようだった。
「じゃあ俺は車を停めてから行くよ」
バーの前で二人を下ろすと、尚政は車を出す。
店に着くと、藤盛が二人に気付きカウンターが出てくる。
「まだいらしてませんよ」
三年前に尋人が美琴を足止めした廊下の奥に歩いていく。お手洗いとは逆に曲がると、VIPと書かれたグリーンの扉が現れる。
この奥は勝手にスタッフルームかと思っていた美琴は、中の様相に驚く。壁にはライトで光らせているのであろうステンドグラスや、モザイクガラスの照明などがあり、黒の皮張りのソファがコの字型に置かれていた。
「すごい……レトロというか、なんか妖艶な感じがする……」
「だってさ、藤盛さん」
「まぁ、近からず遠からずでしょうか。イメージは大正時代なので」
まさか裏側にこんな部屋があったとは驚きだった。
「じゃあ私はこれで……」
藤盛が部屋を出て行くと、尋人は奥のソファに荷物を置くとそのまま座った。
「美琴、おいで」
手招きされ、美琴はゆっくり彼の方へ歩いて行くと、手を引っ張られ、尋人の足の上に跨るような形になってしまう。
「尋人⁈」
「いいからいいから」
「……何がいいの? もうすぐ山脇さん来ちゃう……」
「そうだな」
「……これだと後ろが見えないよ」
「いいんだよ。お前は俺が守るから」
どういうこと? そう聞こうとしたのに、尋人にキスをされてしまう。
彼の手が頬に触れ、耳の後ろからゆっくり髪の間を抜けていく。優しいキスが徐々に激しくなり、貪るようなキスに変わっていく。
三年前みたい……。あの時もキスだけで腰が抜けそうになった。
尋人は美琴の耳元に触れた時、驚いて一度唇を離す。再びそれに触れ、愛おしそうに美琴の頬にくちづけた。
「これ……今日着けてきたの?」
美琴の耳元には、三年前の尋人のピアスが光っている。反対の耳には月のピアスも着いていた。
「だって尋人と私を繋いでくれた、大事なお守りだから……」
尋人は美琴の胸元に顔を埋めた。
「尋人……?」
「三年前のあの日、お前のことを俺のものにしておけば良かったって、最近よく思うんだ。そうすればこんな想いをさせずに済んだのにな……。あの頃の俺は仕事ばかりで、もっと甲斐性があれば変わってたんじゃないかってさ」
「……でも逃げたのは私だったわけだし。あんなこと今までしたことなかったから怖くなったの。尋人は女慣れしてたし、どうせ私は一夜だけの相手って思ったら虚しくなった。だからあの日以来、このお店には来なかったの……」
たぶん尋人に話しかけられた時に、恋に落ちていたのかもしれない。
「こんな時に言うのもどうかと思うけど、お前を幸せにするのが俺であればいいのにって思ってる。美琴を幸せにする権利を俺に与えてくれないか?」
「それって……?」
尋人は上着のポケットを手を差し入れ、何かを取り出すと、美琴の左手の薬指にはめる。それはダイヤが花の形に象られた指輪だった。
「美琴はあの男の嘘に苦しんだだろ? この大きさなら嘘じゃないって信じてもらえるかなと思ってさ、とりあえず物に頼ることにした」
美琴は溢れ出る涙を止められなかった。
「たった二ヶ月かもしれないけど、一緒にいて美琴しかいないって確信したんだ。だから俺と結婚しよう」
こんなこと、想像もしていなかった。
尋人は美琴の頬に伝う涙を優しく拭う。
「返事は?」
「はい……! お願いします」
尋人に唇を塞がれ、息も絶え絶えに舌を絡め合う。
もう逃げたりしない。あなたが与えてくれた愛を、私もそれ以上に返したい。あなたと二人で愛を育てていきたい。
スマホを見ることはなかったが、山脇から連絡は来ていなかった。
美琴は家を出る前に、アクセサリーボックスの中から小さな小箱を取り出すとカバンにしまう。
「美琴、行くよ」
「はーい」
尋人に呼ばれ、玄関まで急ぐ。
今日でしっかり終わらせないと。美琴は改めて決意した。
* * * *
仕事が終わり、美琴は慌ただしく病院を出た。外で尚政の車が待っており、運転席の尚政に会釈をしてから後部座席に乗り込む。
「お疲れ様。何もなかった?」
「うん、大丈夫。千葉さんもいつもありがとうございます」
「俺は大丈夫だよ~」
尚政の明るい声が響くと同時に車が走り出す。
尋人の手が美琴の手を握る。言葉はなくても、それだけで尋人の想いが伝わってくるようだった。
「じゃあ俺は車を停めてから行くよ」
バーの前で二人を下ろすと、尚政は車を出す。
店に着くと、藤盛が二人に気付きカウンターが出てくる。
「まだいらしてませんよ」
三年前に尋人が美琴を足止めした廊下の奥に歩いていく。お手洗いとは逆に曲がると、VIPと書かれたグリーンの扉が現れる。
この奥は勝手にスタッフルームかと思っていた美琴は、中の様相に驚く。壁にはライトで光らせているのであろうステンドグラスや、モザイクガラスの照明などがあり、黒の皮張りのソファがコの字型に置かれていた。
「すごい……レトロというか、なんか妖艶な感じがする……」
「だってさ、藤盛さん」
「まぁ、近からず遠からずでしょうか。イメージは大正時代なので」
まさか裏側にこんな部屋があったとは驚きだった。
「じゃあ私はこれで……」
藤盛が部屋を出て行くと、尋人は奥のソファに荷物を置くとそのまま座った。
「美琴、おいで」
手招きされ、美琴はゆっくり彼の方へ歩いて行くと、手を引っ張られ、尋人の足の上に跨るような形になってしまう。
「尋人⁈」
「いいからいいから」
「……何がいいの? もうすぐ山脇さん来ちゃう……」
「そうだな」
「……これだと後ろが見えないよ」
「いいんだよ。お前は俺が守るから」
どういうこと? そう聞こうとしたのに、尋人にキスをされてしまう。
彼の手が頬に触れ、耳の後ろからゆっくり髪の間を抜けていく。優しいキスが徐々に激しくなり、貪るようなキスに変わっていく。
三年前みたい……。あの時もキスだけで腰が抜けそうになった。
尋人は美琴の耳元に触れた時、驚いて一度唇を離す。再びそれに触れ、愛おしそうに美琴の頬にくちづけた。
「これ……今日着けてきたの?」
美琴の耳元には、三年前の尋人のピアスが光っている。反対の耳には月のピアスも着いていた。
「だって尋人と私を繋いでくれた、大事なお守りだから……」
尋人は美琴の胸元に顔を埋めた。
「尋人……?」
「三年前のあの日、お前のことを俺のものにしておけば良かったって、最近よく思うんだ。そうすればこんな想いをさせずに済んだのにな……。あの頃の俺は仕事ばかりで、もっと甲斐性があれば変わってたんじゃないかってさ」
「……でも逃げたのは私だったわけだし。あんなこと今までしたことなかったから怖くなったの。尋人は女慣れしてたし、どうせ私は一夜だけの相手って思ったら虚しくなった。だからあの日以来、このお店には来なかったの……」
たぶん尋人に話しかけられた時に、恋に落ちていたのかもしれない。
「こんな時に言うのもどうかと思うけど、お前を幸せにするのが俺であればいいのにって思ってる。美琴を幸せにする権利を俺に与えてくれないか?」
「それって……?」
尋人は上着のポケットを手を差し入れ、何かを取り出すと、美琴の左手の薬指にはめる。それはダイヤが花の形に象られた指輪だった。
「美琴はあの男の嘘に苦しんだだろ? この大きさなら嘘じゃないって信じてもらえるかなと思ってさ、とりあえず物に頼ることにした」
美琴は溢れ出る涙を止められなかった。
「たった二ヶ月かもしれないけど、一緒にいて美琴しかいないって確信したんだ。だから俺と結婚しよう」
こんなこと、想像もしていなかった。
尋人は美琴の頬に伝う涙を優しく拭う。
「返事は?」
「はい……! お願いします」
尋人に唇を塞がれ、息も絶え絶えに舌を絡め合う。
もう逃げたりしない。あなたが与えてくれた愛を、私もそれ以上に返したい。あなたと二人で愛を育てていきたい。