忘却不能な恋煩い〜再会した彼は、恋焦がれた彼女を溺愛する〜
尋人が好き。愛してるじゃ足りないくらい、彼が欲しい。
美琴は尋人の首に腕を回して夢中でキスを繰り返した……背後で声がするまでは。
「おい、どういうことだよ」
体が震え、離れようとした美琴の体を尋人は強く抱きしめ離さなかった。
山脇は明らかに苛立っていた。そして尋人の顔を思い出すと、見下したような表情を浮かべる。
「この間の車の奴だな。かわいそうに。美琴に俺の代わりにされたんだな。お前も酷い女だよなぁ」
不安で心拍数が上がる。そんな美琴の背中を尋人は安心させるように優しく叩く。『大丈夫』そう言われているようだった。
「俺への当て付けなんだろ? こんなことしなくたって、妻とは別れるし、お前を愛してる気持ちは変わらないよ」
美琴はゾッとした。改めて口に出されると、尋人の言葉とこんなにも違うことに気付かされる。
「大丈夫。俺だって妻がいるし、お前の浮気を問い詰めたりしないよ。だから早くこっちに来いよ」
この人は何を言ってるの? なんでこんな男と関係を続けていたんだろう。この人の言葉には嘘と威圧感しか感じない。
美琴は尋人の胸をそっと押す。尋人は腕の力を緩めて美琴の顔を見つめる。
今度は美琴から尋人にキスをした。そして彼の耳元に囁く。
「あなたを愛してる」
美琴は尋人の上に座ったまま、顔だけ振り向いた。
「山脇さん、もうあなたの嘘には付き合いきれない。あなたのせいで私は自分から幸せになる権利を手放してしまってた。でも彼が私が手放してしまったものを与えてくれたの。もう間違えたりしない。だからあなたとはおしまい。もう会わないし、会いたくもない」
「ふ、ふざけんな! 俺がどれだけ……!」
「ただヤっただけだろ。自分を肯定すんなよ、胸糞悪い」
「このクソ野郎が! 美琴、こっちに来い!」
「行くわけない。私が愛してるのは彼だもの」
騒ぎを聞きつけ藤盛が部屋に入ってくる。
「お客様、これ以上騒がれますと警察を呼ぶことになりますが……」
その言葉で山脇は下唇を噛んだ。そして美琴を睨みつける。
「クソッ! お前みたいな女、遊びにきまってんだろ。ちょっと優しくすりゃやらせてくれんだからさ。何が不倫だ。思い上がんじゃねーよ! お前らみんな、地獄に堕ちろ!」
「地獄に堕ちるのはお前だよ。これ、なんだかわかるよな?」
尋人はカバンの中から封筒を取り出すと、ニヤッと不適な笑みを浮かべる。
「あんたのこと、調べさせてもらったんだ。あんたも相当なクズだな。これが奥さんにバレたらどうなるか……お前が一番良くわかってるよな」
山脇の顔が青ざめていくのがわかった。
「ど、どうするつもりだ……」
「別に。あんたが大人しくしてくれればそれ以上は何も言わない。ただ美琴に何かしようものなら……社会的にテメェを追放してやる」
「わ、わかった……! だから妻には……」
「言わないさ。でもこれは俺が持ってるし、今後追跡調査がないとも限らない。真っ当に生活するんだな」
山脇はフラフラしながら、部屋から出て行った。
美琴は何が起きたのか分からず、呆然とその様子を見守っていた。しかし山脇の姿が消えると、美琴は尋人の胸に倒れ込んだ。
「……終わったの?」
「終わったな。ちゃんと言えたじゃん」
「うん……」
内心は尋人の攻撃ポイントの方が高かった気がしたが、とりあえず終わったことに安堵した。
扉が開き、尚政が入ってくる。
「お疲れ様。とりあえずあの男は帰ったよ。美琴ちゃんも頑張ったね! ……その態勢もなかなかなものだけど」
すっかり安心しきっていたため、今も尋人の上に跨ったままでいることを忘れていた。
「じゃあ一仕事終えた後だし、疲れたでしょ? 帰りますか?」
尋人と美琴は顔を見合わせて笑う。
「そうだな。帰るとするか」
「そうだね」
「俺は車とってくるから、準備して待ってて」
尚政が部屋から出て行く。美琴は尋人の膝から降りようとしたが、腰に腕を回され動けなくなる。
「尋人?」
尋人は美琴の指輪にキスをする。
「これで晴れて二股終了だな。正式な彼氏ってことでいい?」
正式な彼氏……ようやく普通の恋人同士になれたんだ。この関係にもう不安を感じなくてもいいと思うと嬉しくなる。
「今までありがとう。これからもお願いします」
尋人の笑顔がいつになく優しく感じる。
「全部終わったらの約束、覚えてる?」
「引越しのこと?」
「そう。でもあの頃とちょっと意味合いが変わったと思って」
「……どういうこと?」
尋人はいたずらっぽく笑う。
「美琴の実家にご挨拶に行かないと」
美琴ははっとしてから、顔を真っ赤に染める。
そうだ、さっきプロポーズされて、私も了承したじゃない。今日がそんな日になるなんて思いもしなかった。
でも指にはめられた指輪を見て、思わず顔が緩んでしまう。夢じゃないんだ。こんな日が来るなんて、三年前は想像出来なかった。
「あっ、ということは、私も尋人の御両親にご挨拶するってことだよね……どうしよう、こんな庶民出の私が社長に挨拶なんて大丈夫かな……」
ブルーエングループの社長に会うなんて、急に怖くなってきた。でも尋人はそんな美琴を見て吹き出す。
「大丈夫だよ。うちの親だって庶民出で、いきなり社長になった感じだからさ。家は少し広くなったけど、生活は至って普通だと思うよ。まぁ何があっても俺が美琴を守るから安心して」
なんて頼りになる彼氏かしら……。
私の幸せはあなたのそばにある。
美琴は尋人の首に腕を回して夢中でキスを繰り返した……背後で声がするまでは。
「おい、どういうことだよ」
体が震え、離れようとした美琴の体を尋人は強く抱きしめ離さなかった。
山脇は明らかに苛立っていた。そして尋人の顔を思い出すと、見下したような表情を浮かべる。
「この間の車の奴だな。かわいそうに。美琴に俺の代わりにされたんだな。お前も酷い女だよなぁ」
不安で心拍数が上がる。そんな美琴の背中を尋人は安心させるように優しく叩く。『大丈夫』そう言われているようだった。
「俺への当て付けなんだろ? こんなことしなくたって、妻とは別れるし、お前を愛してる気持ちは変わらないよ」
美琴はゾッとした。改めて口に出されると、尋人の言葉とこんなにも違うことに気付かされる。
「大丈夫。俺だって妻がいるし、お前の浮気を問い詰めたりしないよ。だから早くこっちに来いよ」
この人は何を言ってるの? なんでこんな男と関係を続けていたんだろう。この人の言葉には嘘と威圧感しか感じない。
美琴は尋人の胸をそっと押す。尋人は腕の力を緩めて美琴の顔を見つめる。
今度は美琴から尋人にキスをした。そして彼の耳元に囁く。
「あなたを愛してる」
美琴は尋人の上に座ったまま、顔だけ振り向いた。
「山脇さん、もうあなたの嘘には付き合いきれない。あなたのせいで私は自分から幸せになる権利を手放してしまってた。でも彼が私が手放してしまったものを与えてくれたの。もう間違えたりしない。だからあなたとはおしまい。もう会わないし、会いたくもない」
「ふ、ふざけんな! 俺がどれだけ……!」
「ただヤっただけだろ。自分を肯定すんなよ、胸糞悪い」
「このクソ野郎が! 美琴、こっちに来い!」
「行くわけない。私が愛してるのは彼だもの」
騒ぎを聞きつけ藤盛が部屋に入ってくる。
「お客様、これ以上騒がれますと警察を呼ぶことになりますが……」
その言葉で山脇は下唇を噛んだ。そして美琴を睨みつける。
「クソッ! お前みたいな女、遊びにきまってんだろ。ちょっと優しくすりゃやらせてくれんだからさ。何が不倫だ。思い上がんじゃねーよ! お前らみんな、地獄に堕ちろ!」
「地獄に堕ちるのはお前だよ。これ、なんだかわかるよな?」
尋人はカバンの中から封筒を取り出すと、ニヤッと不適な笑みを浮かべる。
「あんたのこと、調べさせてもらったんだ。あんたも相当なクズだな。これが奥さんにバレたらどうなるか……お前が一番良くわかってるよな」
山脇の顔が青ざめていくのがわかった。
「ど、どうするつもりだ……」
「別に。あんたが大人しくしてくれればそれ以上は何も言わない。ただ美琴に何かしようものなら……社会的にテメェを追放してやる」
「わ、わかった……! だから妻には……」
「言わないさ。でもこれは俺が持ってるし、今後追跡調査がないとも限らない。真っ当に生活するんだな」
山脇はフラフラしながら、部屋から出て行った。
美琴は何が起きたのか分からず、呆然とその様子を見守っていた。しかし山脇の姿が消えると、美琴は尋人の胸に倒れ込んだ。
「……終わったの?」
「終わったな。ちゃんと言えたじゃん」
「うん……」
内心は尋人の攻撃ポイントの方が高かった気がしたが、とりあえず終わったことに安堵した。
扉が開き、尚政が入ってくる。
「お疲れ様。とりあえずあの男は帰ったよ。美琴ちゃんも頑張ったね! ……その態勢もなかなかなものだけど」
すっかり安心しきっていたため、今も尋人の上に跨ったままでいることを忘れていた。
「じゃあ一仕事終えた後だし、疲れたでしょ? 帰りますか?」
尋人と美琴は顔を見合わせて笑う。
「そうだな。帰るとするか」
「そうだね」
「俺は車とってくるから、準備して待ってて」
尚政が部屋から出て行く。美琴は尋人の膝から降りようとしたが、腰に腕を回され動けなくなる。
「尋人?」
尋人は美琴の指輪にキスをする。
「これで晴れて二股終了だな。正式な彼氏ってことでいい?」
正式な彼氏……ようやく普通の恋人同士になれたんだ。この関係にもう不安を感じなくてもいいと思うと嬉しくなる。
「今までありがとう。これからもお願いします」
尋人の笑顔がいつになく優しく感じる。
「全部終わったらの約束、覚えてる?」
「引越しのこと?」
「そう。でもあの頃とちょっと意味合いが変わったと思って」
「……どういうこと?」
尋人はいたずらっぽく笑う。
「美琴の実家にご挨拶に行かないと」
美琴ははっとしてから、顔を真っ赤に染める。
そうだ、さっきプロポーズされて、私も了承したじゃない。今日がそんな日になるなんて思いもしなかった。
でも指にはめられた指輪を見て、思わず顔が緩んでしまう。夢じゃないんだ。こんな日が来るなんて、三年前は想像出来なかった。
「あっ、ということは、私も尋人の御両親にご挨拶するってことだよね……どうしよう、こんな庶民出の私が社長に挨拶なんて大丈夫かな……」
ブルーエングループの社長に会うなんて、急に怖くなってきた。でも尋人はそんな美琴を見て吹き出す。
「大丈夫だよ。うちの親だって庶民出で、いきなり社長になった感じだからさ。家は少し広くなったけど、生活は至って普通だと思うよ。まぁ何があっても俺が美琴を守るから安心して」
なんて頼りになる彼氏かしら……。
私の幸せはあなたのそばにある。