彼と私のお伽噺
「最後に、ベールがふわぁっと風になびかせてみますね」
ふたりでくっつき合った写真を何枚か撮られたあと、カメラマンのアシスタントが私が被っていた長いベールの裾を引っ張って、ふわりと離す。
ベセスダテラスの階段をバックに、カメラマン曰く「エモい写真」を撮ったあと、私と昴生さんのウエディングフォト撮影ツアーは終わった。
「ふたりとも美男美女で、本物の王子様とお姫様みたいでしたね」
撮影が終わったあと、ニューヨークでカメラマンを五年ほどやっているというアキコさんが、にこにこ笑顔で声をかけてくれる。
「そんなことは……」
「そんなことありますよ。きっと素敵な仕上がりになるので、楽しみにしていてください」
撮ったばかりの写真をカメラのディスプレイに映して確かめながら、アキコさんがちらっと私のお腹を気にするように見る。
「長時間撮影だったけど大丈夫ですか? 疲れてません?」
「はい、大丈夫です」
まだほとんど目立たないお腹をドレスの上からそっと撫でると、昴生さんがそばに来て私の肩にジャケットをかけた。