彼と私のお伽噺
「それ、結婚祝い」
「え、いいんですか? 私、何も用意してない……」
「お前からもらおうなんて思ってない」
「ありがとうございます。でも、どうしてそのまま……?」
高価なものだろうに、そのままポケットに入れてるなんて。不思議に思っていると、昴生さんが私の手から少し強引にネックレスを奪い取った。
「貸せ。どうせすぐつけるのに、まどろっこしいだろ」
留め金を外した昴生さんが、ネックレスを私の首にかけてくれる。
初めからそのつもりだったから、箱にも入れずに渡してきたのかもしれない。
これまでも誕生日に昴生さんがプレゼントをくれることはあった。だけどいつももらうのは日用品や当たり障りのないものばかりだったから、アクセサリーをもらうのはこれが初めてだ。
「どうですか?」
つけてもらったネックレスに指を軽く引っ掛けながら訊ねると、昴生さんが満足げに口端を引き上げた。
「どうって。俺がお前にやったんだから、いいに決まってるだろ」
昴生さんの指が鎖に触れる私の指に触れ、それから首筋をそっと撫でていく。
夜の外気で冷えた昴生さんの指先が素肌に触れて、ビクッと小さく肩が震えた。
それを見て軽く目を細めた昴生さんが、私の顎に指を移動させてグイッと持ち上げる。すぐさま重なった昴生さんの唇は指先の冷たさに反して熱い。