彼と私のお伽噺
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昴生さんに連れられて初めてやってきたコンサート会場は、2000席ほど客席のある広くて本格的なオープンステージのあるホールだった。
お義父さんが知り合いに頼んでもらったという座席は、ステージに近い一階中央のS席で。周囲にはドレスコードを意識した、クラッシックコンサートに行き慣れた感のある人たちが座っている。
私もコンサートデートだということを考えて、華美になりすぎないような薄いグレーのワンピースを着てジャケットを羽織ってきたけど。
私なんかがこんないい席に座らせてもらっていいものかと、そわそわして仕方がない。
対して、襟付きシャツにダークのジャケットを着込んだ昴生さんは、座席に深く腰掛けて長い脚を組んで堂々と座っている。
昴生さんがクラッシックを聴いているところを見たことはないけど、TKMグループの御曹司である彼は、こういうちょっと格式高そうなコンサートに来ることも慣れているのだろうか。
昴生さんの横顔をちらちらと盗み見ていると、彼が私のほうを振り向いて不審そうに眉を寄せた。
「なんだ、さっきから人の顔じろじろ見て」
「いえ、なんか。場の空気に緊張しちゃって。昴生さんは、こういうの慣れてるんですか?」
「別に慣れてはない。でも緊張はしないな」
「昴生さんは、そうでしょうね……」
昔から、どこに行っても堂々としている彼が緊張しているところなんて見たことがない。
そんな話をしていると、開演のブザーが鳴ってコンサートが始まった。