彼と私のお伽噺

 私の髪の色や瞳の色が日本人離れしているから、妃香さんは昴生さんと私が兄妹でないと気付いたのだろうけど。年が離れているうえに、子どもっぽい私は、昴生さんの妻には見えないのかもしれない。

 それが、少しショックだった。

 妃香さんとしばらく話をしてコンサート会場を出たあと、昴生さんは私をハンバーグのお店に連れて行ってくれた。

 国産和牛を使ってあるというハンバーグは、肉汁たっぷりですごく美味しかった。

 普段どおり大きな口を開けてパクつきたかったけど、昴生さんに「子どもっぽい」と思われたら嫌だから、なるべくおとなしく、品良く食べるように努力した。

 妃香さんみたいに、大人で美人な女性と会ったあとだから特に……。


「デザートも食うか?」

 ハンバーグを食べ終わったあと、昴生さんが私にデザートメニューを差し出してきた。

 メニューには、チョコレートケーキやブリュレ、アイスの盛り合わせなど、魅力的なデザートが写真付きで載っている。

 どれも美味しそう……。

 食い入るように見ていると、メニューの向こうで昴生さんがククッと小さく笑うのがわかった。

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