彼と私のお伽噺

 デザートはすっごく気になるけど、こんなものにつられて喜んでたら、また子どもっぽいって思われるのかな……。


「昴生さんは、どうします?」

「俺はコーヒー」

 どうやら、昴生さんはデザートは食べないらしい。だったら……。

「じゃぁ、私もコーヒーで」

 澄ました声でそう言ってテーブルの端にメニューを戻すと、昴生さんが怪訝な顔をした。


「デザート食わないなんて、腹でも痛いのか?」

 子どもっぽく思われたくなくて昴生さんに合わせたのに、真面目に腹痛を疑われてちょっとガックリする。


「違います」

「お前、いつもそんなコーヒー飲まないよな。カフェラテとかじゃなくていいの?」

 家でも、コーヒーをブラックで飲むのは昴生さんだけ。私が飲むときはコーヒーの量に対してミルクを三倍は入れている。

 そんな私がコーヒーを頼むなんて言うから、昴生はなんだか不審げだった。
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