彼と私のお伽噺



 夕飯のあと片付けを終えてリビングに行くと、ソファーで持ち帰った仕事をしていた昴生さんが、座ったままウトウトとしていた。

 渡米まではあと三ヶ月。昴生さんはこの頃帰宅が遅く、帰ってきてからもしょっちゅう仕事用のパソコンを開いている。


「昴生さん、お風呂は?」

 パソコンを膝に載せたまま、ソファーの背もたれに身体を逸らすようにして預けている昴生さんの肩をトントンと叩く。

 けれど、よほど眠たいのか……。昴生さんは私の呼びかけに全く反応しなかった。


「昴生さん、コウちゃーん」

 お風呂は明日の朝にシャワーを浴びればいいとしても、できればソファーではなくちゃんとベッドで寝てもらいたい。

 背の高い昴生さんを部屋まで運ぶのは無理だし、なんとか自力で部屋まで移動してほしくて耳元で何度も呼びかけたけど……。返ってくるのは、寝息ばかりだ。

 仕方ないな。

 ため息を吐くと、昴生さんの膝の上からパソコンを退けてログアウトする。

 それからゆっくりと昴生さんの身体をソファーに横たわらせると、彼の部屋から毛布を運んできて上からかけた。

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