彼と私のお伽噺
「お前のせいで、目が覚めた。責任取れ」
高圧的な態度で私を見下ろしてくる昴生さんの瞳が暗がりの中で艶めいて光っていて、その美しさにゾクリとする。
「子どもみたいだ」と笑うくせに、私を見つめる昴生さんの熱っぽい眼差しも、素肌を撫でる手の動きも。子どもに対するそれじゃない。
「コウちゃん、好き……」
キスの合間に吐息とともにそう漏らすと、昴生さんが私の髪を撫でながら目を細めた。
「知ってる」
自信たっぷりに、だけどとても愛おしそうにそう言った彼は、意識が途切れて眠りにつく間際まで私のことしか見ていなかった。
妃香さんからのメッセージなんて、気にすることなかった。
ベッドの上で身体が蕩けそうになるほど昴生さんに愛されたあと、彼の腕の中で安堵して眠った。
だけどそれから三週間後。昴生さんがお風呂に入っているときに、ダイニングテーブルに置きっぱなしであった彼のスマホがメッセージを受信した。
ダイニングで紅茶を飲んでいた私が目にしてしまったのは、ロック画面に通知された妃香さんからのメッセージ。
【ところで、会うのはいつにする?】
前に届いた妃香さんからのメッセージのことをすっかり忘れかけていた頃だったから、ひさしぶりの彼女からのメッセージに心臓がドクンと跳ねた。