彼と私のお伽噺
◇
今から五年前。私が十七歳のときに、育ての親だった祖母が亡くなった。
唯一の肉親を亡くして、私はこれからひとりきりでどうすればいいんだろう。
病院で紹介された葬儀屋さんに言われるままに行った葬儀費用は、思っていたよりも随分と高くて。祖母が貯めてくれていたお金をかなり使ってしまった。
残りの貯金と、自身でアルバイトして貯めたお金で数ヶ月はやりくりできるかもしれないけど……。来月以降の家賃を払うためには、今のバイトよりももっと割のいい仕事を探さなければいけない。
そうなると、学校は? そもそも、祖母が借りていた家に私はこのまま住み続けることができるの……?
祖母が亡くなって哀しいのに、今後のことを考えるとわからないことや不安ばかりで、祖母のために涙を流す余裕すらない。
葬儀のあと、住んでいたアパートの一室で祖母の遺骨を抱えて茫然としていると、突然、黒の喪服に身を包んだ長身の男がやってきた。
玄関に立ったその男を見たとき、憐れんだ死神が、ひとりきりになった私を連れにきたのかと思った。