彼と私のお伽噺
「ど、どうしてここにいるんですか?」
「それはこっちのセリフだ。お前こそ、なんで俺に許可なくホテルになんか泊まってんだよ」
低い声で問い詰められて、身体が縮こまる。
「そ、れは……」
膝にかかっているブランケットをぎゅっと握りしめてうつむくと、昴生さんが私の顎をつかんでグイッと持ち上げた。
「お前まさか、俺に隠れて部屋に男連れ込んだりしてないだろうな」
昴生さんに上から睨まれて、じわりと目の端に涙が滲む。
「そ、それこそこっちのセリフです! どうして、昨日は嘘ついたんですか?」
「嘘?」
他の人と会ってたのは私じゃなくて昴生さんのほうなのに。
「嘘ついたじゃないですか。昨日の夜に一緒に食事をした相手、ほんとうは優生さんじゃなかったんでしょう?」
「なんのことだよ」
「とぼけないでください。楽しかったですか? 妃香さんとのデートは」
涙目でじっと睨むと、昴生さんが私を見つめてまばたきをした。