彼と私のお伽噺
「だって……」
あんなに疑いたくなってしまうような条件ばかり突きつけられて、不安にならないわけがない。
「俺が昨日一緒に食事してたのは、優生だよ」
「嘘……!」
この後に及んでまだ嘘をつくのかと思って睨んだら、昴生さんが私に負けないくらいの目力で睨んできたからびびって怯んでしまった。
「嘘だと思うなら、優生に確かめろ。優生との食事の前に妃香さんに会ったのは、ちょっと相談があったからだ。咲凛がどこで俺たちのことを見たのかは知らないが、カフェで話して一時間もしないうちに別れた」
昴生さんが私の目をまっすぐに見てそう説明する。
嘘はついていないように見えたけど、わざわざ妃香さんに会って何を相談したかったのかがわからないから、彼に対する疑惑は消えない。
「妃香さんにこっそり会って、何を相談してたんですか?」
「言わないとダメか?」
「私には話せないようなことを相談してたんですね。昴生さんは、本音で話せない私をニューヨークなんかに連れて行って大丈夫なんですか?」
妃香さんに会っていた理由をはっきりと教えてくれない昴生さんに業を煮やして嫌味な言い方をすると、彼が眉根を寄せて長いため息を吐いた。