彼と私のお伽噺

「そういえば……、どうして私がここにいるってわかったんですか?」

 居場所は伝えなかったはずなのに。


「お前の行きそうな場所なんて、だいたい検討ついてんだよ。ここ、昔、矢木さんと住んでた家の近くだろ。駅の近くにあるビジネスホテルはここ一軒だけだし、それにこのホテルはうちのグループの系列だ」

「え……」

「今度俺にバレずに無断外泊するなら、そのときはTKMグループの系列じゃないホテルを選べよ」

「だから、家出です……!」

「同じだろ。まぁ、もう二度とさせねぇけど」

 ベッドから腰を上げた昴生さんが、私を見下ろして、ふんっと笑う。自信たっぷりなその笑みが昴生さんらしい。

 この先また逃げ出したくなるようなことが起きても、私は結局彼につかまってしまうんだろうな。

 そう思いながら、昴生さんを見上げて少し笑ってしまった。

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