冷めない熱で溶かして、それから。


「上手く言えないんですか、昨日も、その前も……というか、先輩にはじめて会ったときから、まるで俺が俺じゃないみたいなんです」

 口を挟むようなことはせず、まずは松野くんの話だけに集中しようと耳を傾ける。
 今は余計なことを考える必要はない。

「先輩に会うたび、自分の知らない感情を抱いてるみたいで……だから昨日も、そんな感情に振り回されて、制御できずに先輩を傷つけてしまいました」

 すみません、とまた謝られる。
 ここまで謝られると、私が悪く思えてしまう。


「正直、いまもわかってないです。この感情が何なのか。いつも周りからの好意を受け入れる側だったので、どうしたいのかも上手く表せないです。中途半端なのはわかってるんですけど、それでも……」

 松野くんの揺るがない瞳が、私を捉えていた。

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