冷めない熱で溶かして、それから。




 次の日。
 私はいつもの電車に乗るため、ホームで電車を待っていた。

 そういえば、昨日の男の人は今日もいるのかな。
 ふと気になり、同時に怖くなった。


 だって昨日、うるさいって言われたのだ。
 もし今日も会ったとして、何を言われるかわからない。

 念のため私は車両を変えることにした。


 やってきた電車に乗るなり、まずは周りを見渡したけれど、昨日の男の人の姿はなかった。


 良かった……。

 今日も同じ車両に乗っているのか、それとも昨日がたまたま早い電車だったのかはわからないけれど、会うことがなく安心する。


 電車に揺られている間、心穏やかに過ごすことができた。

 同じ電車かもしれないというのに、私はつい警戒心が緩んでしまっていた。

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